講演情報
[R2-05]Keatite結晶が示す負の熱膨張率の原因について
*則竹 史哉1 (1. 山梨大学)
キーワード:
キータイト、分子動力学法、負の熱膨張
Keatiteは合成によって得られた二酸化珪素多形のひとつで、1954年にKeatによって合成された(Keat, 1954, Science)。天然では柘榴石輝岩から発見されている(Hill et al., 2013, Am. Min.)。負の体積別膨張率を持っていることが知られておりSiO4四面体が頂点共有して作るネットワーク構造はSpodumeneの高温多形のSiO4 /AlO4四面体フレームワークと同様で固溶体を形成するため耐熱材料として用いられている。
Noritake and Naito (2023, J. Non-Cryst. Sol.)に基づく分類法では五員環を主としその他に六・七・八員環が存在するネットワーク構造とされ、結晶構造中に奇数員環が見られる変わった結晶構造である。
昨年度の発表では分子動力学シミュレーションで負の熱膨張率の原因の解析を試みた。いくつかのポテンシャルモデルを試した結果、三体ポテンシャルも含むFGモデル(Feuston and Garofalini, 1988, J. Chem. Phys.)であれば負の熱膨張率を再現することが可能であることを見出した。また、結晶中の酸素の熱振動の方向は架橋についてSi-O-Si平面に垂直、あるいはSi-Siヴェクターに垂直な方向に偏っていることが分かった。この場合、LibrationというSi-O結合の実際の長さよりも平均座標から求められる見かけのSi-O結合長が短くなるという現象が起きることで負の熱膨張が引き起こされることが予想される(Miller et al., 2009, J. Mater. Sci.; Antao, 2016, Acta Cryst. B)。しかしながら、分子動力学シミュレーションではそのようにはなっておらず、見かけのSi-O、Si-Si距離双方ともに極僅かに正の線熱膨張係数を持っていた。
本年度の発表では引き続きKeatiteの負の熱膨張挙動の原因を分子動力学法を用いて研究して得られた成果を発表する。平均座標を用いたSi-Si二対相関関数を解析すると、そのピーク位置は温度依存性がほぼ見られない。しかしながら第二配位圏ピークをSi-Si-Siと架橋しているもの、あるいはトポロジックには遠いがジオメトリックには近くなっているものに分離して解析を行うと、後者の分布は負の温度依存性を持っていることが分かった。これは五員環は小さくならないが、そうでない場所が折りたたまれる可能性を示している。五員環の重心の二対相関関数を解析すると、第一ピーク位置は負の温度依存性を持っていた。
SiO2多形が負の熱膨張率を示すとき一般的にはLibrationが原因となっている。しかしながら、発表者による分子動力学シミュレーションおよびその解析ではKeatiteに於いては温度に対してほとんど大きさの変わらないか僅か膨張する五員環同士が折りたたまれることによって負の熱膨張率が発現していることを示唆する結果が得られた。
Noritake and Naito (2023, J. Non-Cryst. Sol.)に基づく分類法では五員環を主としその他に六・七・八員環が存在するネットワーク構造とされ、結晶構造中に奇数員環が見られる変わった結晶構造である。
昨年度の発表では分子動力学シミュレーションで負の熱膨張率の原因の解析を試みた。いくつかのポテンシャルモデルを試した結果、三体ポテンシャルも含むFGモデル(Feuston and Garofalini, 1988, J. Chem. Phys.)であれば負の熱膨張率を再現することが可能であることを見出した。また、結晶中の酸素の熱振動の方向は架橋についてSi-O-Si平面に垂直、あるいはSi-Siヴェクターに垂直な方向に偏っていることが分かった。この場合、LibrationというSi-O結合の実際の長さよりも平均座標から求められる見かけのSi-O結合長が短くなるという現象が起きることで負の熱膨張が引き起こされることが予想される(Miller et al., 2009, J. Mater. Sci.; Antao, 2016, Acta Cryst. B)。しかしながら、分子動力学シミュレーションではそのようにはなっておらず、見かけのSi-O、Si-Si距離双方ともに極僅かに正の線熱膨張係数を持っていた。
本年度の発表では引き続きKeatiteの負の熱膨張挙動の原因を分子動力学法を用いて研究して得られた成果を発表する。平均座標を用いたSi-Si二対相関関数を解析すると、そのピーク位置は温度依存性がほぼ見られない。しかしながら第二配位圏ピークをSi-Si-Siと架橋しているもの、あるいはトポロジックには遠いがジオメトリックには近くなっているものに分離して解析を行うと、後者の分布は負の温度依存性を持っていることが分かった。これは五員環は小さくならないが、そうでない場所が折りたたまれる可能性を示している。五員環の重心の二対相関関数を解析すると、第一ピーク位置は負の温度依存性を持っていた。
SiO2多形が負の熱膨張率を示すとき一般的にはLibrationが原因となっている。しかしながら、発表者による分子動力学シミュレーションおよびその解析ではKeatiteに於いては温度に対してほとんど大きさの変わらないか僅か膨張する五員環同士が折りたたまれることによって負の熱膨張率が発現していることを示唆する結果が得られた。
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