講演情報
[R3-09]CaSiO3-CaTiO3カルシウムペロブスカイトの水溶解度と下部マントル水循環
*石井 貴之1、Yu Yingxin2 (1. 岡山大学、2. University of Science and Technology of China)
キーワード:
マントル、水、カルシウムペロブスカイト、玄武岩
水は沈み込むスラブによってマントル深部に輸送され、マントル鉱物の化学的・物理的性質に大きな影響を与える。含水リングウッダイトの発見により、遷移層は少なくとも局所的に含水化していることが明らかとなった。しかし、主要下部マントル鉱物であるブリッジマナイトやフェロペリクレースの含水量は0.1 wt.%以下と低いことが知られており、下部マントルにおける水の分布は未だ不明瞭である。
CaSiO3立方晶ペロブスカイト(デイブマオアイト)は、下部マントル橄欖岩や地殻物質中に豊富に含まれる鉱物の一つである。最近の実験的研究や理論研究によりデイブマオアイトの含水量が報告されているが、先行研究間で整合的な結果が得られていない。その理由の一つとして、デイブマオアイトは急冷回収することができないため、一気圧での精密な含水量分析が困難であることが挙げられる。CaTiO3成分を40 mol%以上含むカルシウムペロブスカイトは、急冷可能であることが知られている。そこで本研究では、CaSiO3デイブマオアイトの含水量を推定するため、川井型マルチアンビルプレスにより、CaSiO3-CaTiO3系ペロブスカイト単結晶を含水条件下で合成した。回収した単結晶を用いて、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により常圧下での精密な含水量測定を行った。
高圧実験は、岡山大学惑星物質科学研究所に設置された川井型マルチアンビルプレスを用いて行った。出発物質として天然スオルナイト[Ca2Si2O5(OH)2・H2O]:CaTiO3=6:4または2:8 (モル比)の粉末混合物を準備した。これら試料を、溶接した白金カプセルに入れ、15-25 GPa、1700-2100 Kの条件でペロブスカイト相の単結晶合成を試みた。すべての実験で、回収試料は、100-300 μmのペロブスカイト単結晶と含水メルトで構成されていた。組成分析は、電子線マイクロアナライザで行い、格子定数は、単結晶X線回折計(XRD)で決定した。
回収した試料の体積は、CaSiO3-CaTiO3系の無水ペロブスカイト相と一致することが分かった。これまでのCaSiO3-H2O系の研究では、Ca2+=2H+の置換機構によりデイブマオアイト中に水が入り、体積減少を引き起こす可能性が示唆されていたが、そのような体積減少がないことが確かめられた。また、回収試料のFTIRスペクトルからはOHバンドが観測されなかった。これらの結果から、CaSiO3-CaTiO3系ペロブスカイト相の水溶解度は、非常に低いことが明らかとなった。この結果は、CaSiO3デイブマオアイトの含水量も非常に低い可能性を示唆している。
発表では、本研究結果から下部マントルの水分布について詳しく議論する。
CaSiO3立方晶ペロブスカイト(デイブマオアイト)は、下部マントル橄欖岩や地殻物質中に豊富に含まれる鉱物の一つである。最近の実験的研究や理論研究によりデイブマオアイトの含水量が報告されているが、先行研究間で整合的な結果が得られていない。その理由の一つとして、デイブマオアイトは急冷回収することができないため、一気圧での精密な含水量分析が困難であることが挙げられる。CaTiO3成分を40 mol%以上含むカルシウムペロブスカイトは、急冷可能であることが知られている。そこで本研究では、CaSiO3デイブマオアイトの含水量を推定するため、川井型マルチアンビルプレスにより、CaSiO3-CaTiO3系ペロブスカイト単結晶を含水条件下で合成した。回収した単結晶を用いて、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により常圧下での精密な含水量測定を行った。
高圧実験は、岡山大学惑星物質科学研究所に設置された川井型マルチアンビルプレスを用いて行った。出発物質として天然スオルナイト[Ca2Si2O5(OH)2・H2O]:CaTiO3=6:4または2:8 (モル比)の粉末混合物を準備した。これら試料を、溶接した白金カプセルに入れ、15-25 GPa、1700-2100 Kの条件でペロブスカイト相の単結晶合成を試みた。すべての実験で、回収試料は、100-300 μmのペロブスカイト単結晶と含水メルトで構成されていた。組成分析は、電子線マイクロアナライザで行い、格子定数は、単結晶X線回折計(XRD)で決定した。
回収した試料の体積は、CaSiO3-CaTiO3系の無水ペロブスカイト相と一致することが分かった。これまでのCaSiO3-H2O系の研究では、Ca2+=2H+の置換機構によりデイブマオアイト中に水が入り、体積減少を引き起こす可能性が示唆されていたが、そのような体積減少がないことが確かめられた。また、回収試料のFTIRスペクトルからはOHバンドが観測されなかった。これらの結果から、CaSiO3-CaTiO3系ペロブスカイト相の水溶解度は、非常に低いことが明らかとなった。この結果は、CaSiO3デイブマオアイトの含水量も非常に低い可能性を示唆している。
発表では、本研究結果から下部マントルの水分布について詳しく議論する。