講演情報

[R4-07]花崗岩の風化度と鉱物表面粗さの関係:広島ががら山の例

*岡村 光1、横山 正1、海堀 正博2 (1. 広島大・先進理工、2. 広島大・防災・減災研究センター)
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キーワード:

花崗岩、風化、反応-輸送モデリング、反応面積

中国地方には花崗岩が広く分布しており,これらが風化するとマサが生成する。花崗岩は主に石英,斜長石,カリ長石,黒雲母からなるが,それぞれ風化に対する耐性が異なる。岩石の風化速度を考える上では,水と鉱物の反応面積の情報が重要である。しかし,この反応面積が風化の進行とともにどのように変化するかについては,まだ研究の余地がある。本研究では,風化度が異なる花崗岩について,各鉱物が水と反応する際の反応面積および鉱物表面粗さがどう異なるかを評価した。研究対象として,広島大学キャンパス内のががら山で深さ20 mまで掘削された花崗岩ボーリングコアを使用した。このボーリングコアでは,未風化部から強風化部までの一連の変化が確認できる。コアから未風化の部分(UNW),風化が中程度の部分(W-2),風化がさらに進んだ部分(W-3)の3つの試料を切り出して,それぞれ流通式反応容器内で純水と60日間反応させて,どのような元素がどのくらいの量溶出するかを調べた。さらに,地球化学計算ソフトPHREEQC (Parkhurst and Appelo, 2013)を用いて,岩石内部の反応-輸送過程を模擬する計算を行い,実験で得られた元素の溶出量と計算結果が一致する条件を探すことで,各鉱物の反応面積および表面粗さを評価した。その結果,斜長石,カリ長石ともに,風化度がUNWからW-2に上がると表面粗さが増大したが,さらに風化度がW-2からW-3に上がると表面粗さが減少した。UNWからW-2における表面粗さの増大に関しては,斜長石,カリ長石共に,外縁部のみが溶けるわけではないことが関係している可能性がある。斜長石では,Naに富む外縁部に比べて中心部はCaに富むものが多い。カリ長石では,内部にアルバイト組成のラメラが存在する。斜長石のCaに富む部分はNaに富む部分よりも溶解が速く,また,カリ長石のラメラ部分はそれ以外の部分よりも溶解が速いと考えられる。これらの溶けやすい部分がW-2ではこれまでに受けた風化により一部溶け去っているため,各鉱物の外縁部に加えて内側も外部に露出するようになっていて,結果としてW-2の方がUNWより高い表面粗さを持つと考えられる。一方,W-2よりW-3の方が表面粗さが小さくなるのは,計算で使用した溶解速度定数が実態と合っていないことによる可能性がある。鉱物の溶解速度は,一般に時間の経過と共に減少していくことが知られている (White and Brantley, 2003)。計算においてこの影響を補正する場合は,風化度が大きいほど,使用する溶解速度定数を小さく設定する必要がある。しかし,W-2やW-3がこれまでに風化を受けた時間の情報が得られていないため,今回の計算では風化度にかかわらず同じ速度定数を使用している。そのため,特にW-3の計算においては,実際よりも大きな速度定数を使用している可能性が高い。溶出量には表面粗さ×溶解速度定数が関係するため,実験で得られた溶出量と一致するように表面粗さを決める場合,速度定数が大きければ表面粗さは小さくなる必要があり,結果的に実際よりも小さな表面粗さが算出された可能性が考えられる。