講演情報
[R5-10]NWA 6928ダイオジェナイト中のアパタイトの産状と成因:HED母天体におけるメタソマティズム
*山口 亮1、伊藤 正一2、Barrat Jean-Alix3 (1. 国立極地研究所、2. 京都大学、3. Univ Brest)
キーワード:
エコンドライト、HED隕石、アパタイト、交代変成作用
ユークライトとダイオジェナイトはHED母天体(小惑星ベスタ)に由来する地殻物質であり、形成後に再溶融や熱変成作用、衝突イベントなど、さまざまな二次的プロセスを経験している。近年、流体が関与した交代変成作用(メタソマティズム)が注目されており、「ドライ」とされる母天体において、揮発性元素の挙動を知る重要な手がかりとなっている。これまでに、石英、金属鉄、鉄に富むかんらん石やトロイライトなどが交代変成作用により形成したことが報告されている。本研究では、NWA 6928の中に特異な産状のアパタイトを発見し、その組織と組成から成因について議論する。
本隕石の研磨薄片・厚片を作製し、光学顕微鏡およびFE-SEMにより組織観察を行なった後、EPMAによる主要元素の組成分析を行った。アパタイトのOH組成を、EPMAにより測定したFおよびClの含有量から間接的に算出した。LA-ICP-MSにより、鉱物中の微量元素(希土類元素など)の測定を行った。また、ICP-MS によりバルク組成の定量を行った。
NWA 6928は、主に直方輝石(約80 vol%)とCaに富む斜長石(約20%)からなる集積岩(ダイオジェナイト、もしくは、輝石に富む集積岩ユークライト)である。副成分鉱物として、アパタイト、クロマイト、トロイライトを含む。シリカ鉱物は見つからなかった。輝石のバルク組成(Wo3-7En62-64Fs31-33)は、ダイオジェナイトと集積岩ユークライトとの中間的な値を示す。NWA 6928は、衝撃変成作用受けている。衝撃溶融脈がみられ、また、輝石と斜長石は強い波動消光を示す。また、一部は角礫化している。
本試料はアパタイトを約0.8 vol%も含み、他の同種のHED隕石に比べて顕著に多い。この種の隕石にはアパタイトはほとんど報告されていない。アパタイトは、輝石や斜長石中に不定形またはは脈上(幅数十µm)に存在し、輝石と斜長石の粒界を横断する脈も観察された。これは、すでに存在していた割れ目にそってアパタイトが晶出したことを示唆する。また、割れ目(アパタイト脈)が閉じ丸みを帯びている(再結晶化している)ことから、形成後に数百℃以上でアニーリングを受けたことを示唆する。アパタイトはFに富む(F = ~3.4wt%, Cl < 0.1 wt%)。算出したOHの含有量は<0.7wt%である。また、アパタイトのREE含有量(Euを除く)はCIx~10-40程度であり、玄武岩質ユークライトのマグマ起源のアパタイト(>CIx~1000-10000)に比べ数桁低い。
HED隕石やメソシデライトに含まれるリン酸塩鉱物(アパタイト、メリライト)の形成プロセスとして(1)玄武岩質メルト残液から晶出、(2)金属鉄に含まれるP(シュライバサイト)と珪酸塩鉱物(メルト)との反応が知られている。しかし、集積岩には、メソスタシスを産することは稀で、ユークライト組成マグマの最終残液から晶出するはずのシリカ鉱物が見つからなかった。また、マグマ起源のリン酸塩鉱物は希土類元素に顕著に富むが、NWA 6928中のアパタイト中の含有量は数桁低い。また、親鉄元素含有量(Ni = 13.2 ppm)の低さや組織からメソシデライトの一部であるという可能性は低い。さらに、反応に伴い生成されるはずの組織は観察されなかった。
本研究で見つかったアパタイトは、産状や組成から、集積岩形成後、Fに富む流体が割れ目に沿って移動し、周辺鉱物と反応することなく直接アパタイトが晶出したと考えられる。Fに富むことから、この流体は母天体で形成された可能性が高い。コンドライト隕石のClアパタイトとは、流体の起源や組成が異なることを示唆する。NWA 6928ダイオジェナイト(集積岩ユークライト)は流体を伴う交代変成作用を受けたことが明らかとなった。これは、HED母天体内部での揮発性元素の挙動や流体活動の存在を示す重要な証拠となる。
本隕石の研磨薄片・厚片を作製し、光学顕微鏡およびFE-SEMにより組織観察を行なった後、EPMAによる主要元素の組成分析を行った。アパタイトのOH組成を、EPMAにより測定したFおよびClの含有量から間接的に算出した。LA-ICP-MSにより、鉱物中の微量元素(希土類元素など)の測定を行った。また、ICP-MS によりバルク組成の定量を行った。
NWA 6928は、主に直方輝石(約80 vol%)とCaに富む斜長石(約20%)からなる集積岩(ダイオジェナイト、もしくは、輝石に富む集積岩ユークライト)である。副成分鉱物として、アパタイト、クロマイト、トロイライトを含む。シリカ鉱物は見つからなかった。輝石のバルク組成(Wo3-7En62-64Fs31-33)は、ダイオジェナイトと集積岩ユークライトとの中間的な値を示す。NWA 6928は、衝撃変成作用受けている。衝撃溶融脈がみられ、また、輝石と斜長石は強い波動消光を示す。また、一部は角礫化している。
本試料はアパタイトを約0.8 vol%も含み、他の同種のHED隕石に比べて顕著に多い。この種の隕石にはアパタイトはほとんど報告されていない。アパタイトは、輝石や斜長石中に不定形またはは脈上(幅数十µm)に存在し、輝石と斜長石の粒界を横断する脈も観察された。これは、すでに存在していた割れ目にそってアパタイトが晶出したことを示唆する。また、割れ目(アパタイト脈)が閉じ丸みを帯びている(再結晶化している)ことから、形成後に数百℃以上でアニーリングを受けたことを示唆する。アパタイトはFに富む(F = ~3.4wt%, Cl < 0.1 wt%)。算出したOHの含有量は<0.7wt%である。また、アパタイトのREE含有量(Euを除く)はCIx~10-40程度であり、玄武岩質ユークライトのマグマ起源のアパタイト(>CIx~1000-10000)に比べ数桁低い。
HED隕石やメソシデライトに含まれるリン酸塩鉱物(アパタイト、メリライト)の形成プロセスとして(1)玄武岩質メルト残液から晶出、(2)金属鉄に含まれるP(シュライバサイト)と珪酸塩鉱物(メルト)との反応が知られている。しかし、集積岩には、メソスタシスを産することは稀で、ユークライト組成マグマの最終残液から晶出するはずのシリカ鉱物が見つからなかった。また、マグマ起源のリン酸塩鉱物は希土類元素に顕著に富むが、NWA 6928中のアパタイト中の含有量は数桁低い。また、親鉄元素含有量(Ni = 13.2 ppm)の低さや組織からメソシデライトの一部であるという可能性は低い。さらに、反応に伴い生成されるはずの組織は観察されなかった。
本研究で見つかったアパタイトは、産状や組成から、集積岩形成後、Fに富む流体が割れ目に沿って移動し、周辺鉱物と反応することなく直接アパタイトが晶出したと考えられる。Fに富むことから、この流体は母天体で形成された可能性が高い。コンドライト隕石のClアパタイトとは、流体の起源や組成が異なることを示唆する。NWA 6928ダイオジェナイト(集積岩ユークライト)は流体を伴う交代変成作用を受けたことが明らかとなった。これは、HED母天体内部での揮発性元素の挙動や流体活動の存在を示す重要な証拠となる。
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン