講演情報
[R5-15]小惑星リュウグウとベヌーサンプル中の無水一次鉱物
*川崎 教行1、松本 徹2、荒川 創太3、宮本 悠史1、坂本 直哉1、山本 大貴4、Russell Sara5、Barnes Jessica6、Nguyen Ann7、Connolly Harold6,8、Laurette Dante6、圦本 尚義1 (1. 北大、2. 京大、3. JAMSTEC、4. 九大、5. NHM、6. University of Arizona、7. NASA、8. Rowan Univ.)
キーワード:
Ryugu、Bennu、CI chondrite、難揮発性包有物
C型小惑星リュウグウおよびベヌーのサンプルは,化学的・岩石鉱物学的にCIコンドライト隕石に類似することが知られる(e.g., Yokoyama et al., 2023; Lauretta et al., 2024)。リュウグウ,ベヌーおよびCIコンドライトは,母天体における水質変質作用において生成したフィロケイ酸塩,炭酸塩,磁鉄鉱,硫化鉄などの二次鉱物を主要構成要素とする。一方,無水一次鉱物もわずかながら存在することが報告されている(e.g., Nakamura T. et al., 2023; Yamaguchi et al., 2023)。本研究では,リュウグウ,ベヌーおよびCIコンドライトの材料物質および母天体の起源の理解に向けて,一次鉱物の岩石鉱物学観察,酸素同位体分析,Al-Mg年代測定を実施した(Kawasaki et al., 2022, 2025, in prep.; Barnes et al., 2025)。
リュウグウ,ベヌー,Ivuna隕石のサンプル中では,一次鉱物は主に約30 μm以下の単独の鉱物粒子(オリビン,低Ca輝石,スピネル)として観察された。また,ヒボナイトとスピネルから成るCAI(Ca-Al-rich inclusion),ディオプサイドとスピネルから成るCAI,オリビンに少量のディオプサイドおよび斜長石を伴うAOA(amoeboid olivine aggregate)といった,約10~70 μmの難揮発性包有物もそれぞれのサンプルから低頻度ながら確認された。一方,コンドリュールやそのpseudomorphは観察されなかった。ただし,これまでにリュウグウサンプルからは約30 μmのコンドリュールpseudomorphが1つ発見されている(Nakamura T. et al., 2023)。
難揮発性包有物を構成する鉱物は,ほぼ全てが16Oに富む酸素同位体組成(Δ17O ~ –24‰)を示した。この酸素同位体組成および鉱物組織・化学組成は,始原的炭素質コンドライト中の難揮発性包有物の特徴(e.g., Krot, 2019)とよく一致しており,同様の起源をもつ難揮発性包有物であると考えられる。ベヌーのCAI中のディオプサイドは例外的に16Oに乏しい組成を示した。このディオプサイドの酸素同位体組成および化学組成(TiO2量など)は,CVコンドライト中のType BまたはType C CAI中のディオプサイドの組成(e.g., Kawasaki et al., 2015, 2018)と一致し,おそらくそのような粗粒CAIの岩片であると考えられる。
リュウグウ,ベヌー,Ivuna中のヒボナイトとスピネルから成るCAIのAl-Mg同位体分析の結果,3つのCAI全てが約5 × 10-5の初生26Al/27Al比を示した。この初生比は炭素質コンドライト中のCAIが示す値(e.g., Ushikubo et al., 2017; Kawasaki et al., 2020)と一致しており,これらのCAIが太陽系誕生から約20万年以内に形成したことを示す。リュウグウのヒボナイトとスピネルから成るCAIには,プラケット状の磁鉄鉱が包有されていた。同様の磁鉄鉱はリュウグウのマトリックス中に頻繁に見られる。また,ベヌーのAOA中のオリビン粒子には,フィロケイ酸塩に置換された組織が観察された。このような部分的に水質変質を受けた組織はしばしば見られ,少なくともこれらの難揮発性包有物が,母天体での水質変質作用が進行する前に,リュウグウやベヌーの材料物質として取り込まれたことを示唆する。
マトリックス中の単独のオリビン粒子は16Oに富むもの(Δ17O ~ –24‰)と,16Oに乏しいもの(Δ17O ~ –7~0‰)とに二分され,それぞれの酸素同位体組成は炭素質コンドライト中のAOAおよびコンドリュール中のオリビン(e.g., Ushikubo et al., 2012, 2017)の値と一致する。また前者の酸素同位体組成はベヌーおよびIvuna中のAOAオリビンの値とも一致する。16Oに富むオリビンはAOA形成に関連した粒子であり,16Oに乏しいオリビンはコンドリュール形成に関連した粒子,またはその岩片であると考えられる。また,両オリビンの化学組成(Fo#,CaO量,MnO/FeO比)も,それぞれAOAおよびコンドリュール中のオリビンの組成(e.g., Ushikubo et al., 2012; Komatsu et al., 2015)と調和的であった。
難揮発性包有物および単独の一次鉱物粒子の示す特徴は,リュウグウ,ベヌー,CIコンドライトの間で共通しており,3者の類似性をさらに支持するものである。また本研究により,他の炭素質コンドライトとも材料物質の一部が共通していたことが示された。
リュウグウ,ベヌー,Ivuna隕石のサンプル中では,一次鉱物は主に約30 μm以下の単独の鉱物粒子(オリビン,低Ca輝石,スピネル)として観察された。また,ヒボナイトとスピネルから成るCAI(Ca-Al-rich inclusion),ディオプサイドとスピネルから成るCAI,オリビンに少量のディオプサイドおよび斜長石を伴うAOA(amoeboid olivine aggregate)といった,約10~70 μmの難揮発性包有物もそれぞれのサンプルから低頻度ながら確認された。一方,コンドリュールやそのpseudomorphは観察されなかった。ただし,これまでにリュウグウサンプルからは約30 μmのコンドリュールpseudomorphが1つ発見されている(Nakamura T. et al., 2023)。
難揮発性包有物を構成する鉱物は,ほぼ全てが16Oに富む酸素同位体組成(Δ17O ~ –24‰)を示した。この酸素同位体組成および鉱物組織・化学組成は,始原的炭素質コンドライト中の難揮発性包有物の特徴(e.g., Krot, 2019)とよく一致しており,同様の起源をもつ難揮発性包有物であると考えられる。ベヌーのCAI中のディオプサイドは例外的に16Oに乏しい組成を示した。このディオプサイドの酸素同位体組成および化学組成(TiO2量など)は,CVコンドライト中のType BまたはType C CAI中のディオプサイドの組成(e.g., Kawasaki et al., 2015, 2018)と一致し,おそらくそのような粗粒CAIの岩片であると考えられる。
リュウグウ,ベヌー,Ivuna中のヒボナイトとスピネルから成るCAIのAl-Mg同位体分析の結果,3つのCAI全てが約5 × 10-5の初生26Al/27Al比を示した。この初生比は炭素質コンドライト中のCAIが示す値(e.g., Ushikubo et al., 2017; Kawasaki et al., 2020)と一致しており,これらのCAIが太陽系誕生から約20万年以内に形成したことを示す。リュウグウのヒボナイトとスピネルから成るCAIには,プラケット状の磁鉄鉱が包有されていた。同様の磁鉄鉱はリュウグウのマトリックス中に頻繁に見られる。また,ベヌーのAOA中のオリビン粒子には,フィロケイ酸塩に置換された組織が観察された。このような部分的に水質変質を受けた組織はしばしば見られ,少なくともこれらの難揮発性包有物が,母天体での水質変質作用が進行する前に,リュウグウやベヌーの材料物質として取り込まれたことを示唆する。
マトリックス中の単独のオリビン粒子は16Oに富むもの(Δ17O ~ –24‰)と,16Oに乏しいもの(Δ17O ~ –7~0‰)とに二分され,それぞれの酸素同位体組成は炭素質コンドライト中のAOAおよびコンドリュール中のオリビン(e.g., Ushikubo et al., 2012, 2017)の値と一致する。また前者の酸素同位体組成はベヌーおよびIvuna中のAOAオリビンの値とも一致する。16Oに富むオリビンはAOA形成に関連した粒子であり,16Oに乏しいオリビンはコンドリュール形成に関連した粒子,またはその岩片であると考えられる。また,両オリビンの化学組成(Fo#,CaO量,MnO/FeO比)も,それぞれAOAおよびコンドリュール中のオリビンの組成(e.g., Ushikubo et al., 2012; Komatsu et al., 2015)と調和的であった。
難揮発性包有物および単独の一次鉱物粒子の示す特徴は,リュウグウ,ベヌー,CIコンドライトの間で共通しており,3者の類似性をさらに支持するものである。また本研究により,他の炭素質コンドライトとも材料物質の一部が共通していたことが示された。