講演情報
[R5-P-07]NWA11469隕石中に観察されたフェリハイドライト・ゲータイト・ピロータイトの矛盾点
*豊永 千夏1、Balazs Bradak1、瀬戸 雄介2、Akos Kereszturi3 (1. 神戸大・院海事、2. 大阪公立大・院理、3. ハンガリー天文地球研・コンコリ研)
キーワード:
炭素質コンドライト、NWA11479、岩石磁気解析、走査型電子顕微鏡
NWA11469は2016年にモーリタニアで発見・流通した炭素質コンドライトであり、これまで磁気鉱物学的性質については系統的な調査が行われてこなかった。本研究では、本隕石の磁気的特性および構成鉱物を明らかにすることを目的とし、岩石磁気測定と走査型電子顕微鏡(SEM)観察を組み合わせて調査を行った。初期解析の結果、SEM観察によりFe/Ni合金(カマサイト、テーナイト)、フェリハイドライト、ゲータイト、ピロータイトが確認された一方で、熱磁気測定ではこれらに加えてマグネタイトの寄与が示唆された。しかし、SEMではマグネタイトは確認されず、逆に熱磁気曲線にはフェリハイドライトやゲータイト、ピロータイト由来と考えられる特徴的な変化が現れなかった。これらの相違の要因は、ピロータイトとマグネタイトの保磁力が類似していることや、強磁性鉱物によって弱磁性鉱物の信号が隠される可能性など、複数の要因によって説明されうる。特に、熱磁気測定において鉱物の転移や分解に起因する明確な指標が認められなかったことから、SEMで確認されたフェリハイドライトやピロータイトの実在性については、より慎重な検討が必要である。一方で、熱磁気曲線の挙動はマグネタイトの存在を示唆しており、SEMでは捉えきれない微細な磁気鉱物が含まれている可能性も考えられる。これらの結果は、SEMと岩石磁気手法の検出感度や空間分解能の違いを踏まえた上で、両者のデータを統合的に解釈する必要性を示している。フェリハイドライト/ゲーサイトおよびピロータイトの識別精度を高めるための手法間比較とともに、磁気鉱物の変質過程を明確にすることが、今後の研究における重要な課題である。