講演情報
[R6-P-01]西南日本、白亜紀~古第三紀深成岩類のSr-Nd同位体組成の特徴
*児玉 省吾1、大和田 正明2、永嶌 真理子2、亀井 淳志3 (1. (株)太平洋コンサルタント、2. 山口大学、3. 島根大学)
キーワード:
白亜紀、深成岩類、同位体組成
西南日本には白亜紀から古第三紀にかけて活動した火成岩類が広く分布する.花崗岩類の研究では,記載岩石学的な特徴および伴われる鉱床の種類に基づいた帯状配列 (山陰帯,山陽帯,領家帯) が提唱され,それらの形成過程が議論されてきた.また,Sr 同位体組成の特徴から上記の帯状配列とは異なる観点で下部地殻〜上部マントルの組成的特徴が論じられ,最近では,モナズ石 Th–U–Pb 年代やジルコン U–Pb 年代からマグマ活動の詳細な年代が広域的にわかってきた.このようなデータに基づいたアジア大陸東縁部のテクトニクスの理解は深まりつつある一方で,この時代のマントル同位体組成の特徴および白亜紀を通じたマントル組成の経年変化とその原因,テクトニクスとの関連については,Jahn (2010)やYamaoka et al. (2023)などの研究があるに過ぎない.そこで本研究では,西南日本の白亜紀深成岩類を対象に,マントルウェッジの組成的特徴,マントル組成の経年変化の原因,および同位体組成の広域的な変化とその要因について議論する.マントルウェッジのSr–Nd同位体組成を議論する際は,苦鉄質岩のうちSiO2 < 55 wt.%,Mg# = 70–60,SiO2/Al2O3 = 3–4 の試料を検討対象とした.
山陽帯と領家帯の苦鉄質岩はεNdI 値の幅が広く,正と負両方を示すが,100 Ma 以前の苦鉄質岩の同位体組成は枯渇している.また,山陽帯,領家帯,九州地方の花崗岩および苦鉄質岩は 100 Ma 以後,経年的に同位体組成が肥沃化する傾向にある.以上まとめると,西南日本直下の白亜紀マントルは 110-100 Ma を境に εNdI 値が正から負へと変化し始めた.これは140 Ma 以後東アジア東縁部へのプレート沈み込み速度の増加と,この時期に想定される構造侵食に伴うマントルウェッジへの堆積物の供給に起因し,結果的にマントルウェッジの組成が経年的に不均質化・肥沃化した結果と考えられる.
本研究で検討した苦鉄質岩は未分化あるいはそれに近い組成を示すことから,起源マントルの同位体組成を反映していると考えられる.そこで,92 Maの比較的未分化で負のεNdI値を示す苦鉄質マグマの成因についてマントルウェッジ内のマグマ混合で形成可能か検討した.計算にあたり,SiO2= 66 wt.%の沈み込む泥岩に由来するメルト (εNdI 値 = -7) と九州の未分化玄武岩質マグマ (SiO2 = 52 wt%, εNdI 値 = +4) を端成分と仮定した.その結果,92 Ma の肥沃な同位体組成を再現するためには,端成分の大陸地殻由来のメルト (花崗岩質メルト) とマントル起源のメルト(玄武岩質メルト)を7:3で混合する必要があり,単純混合メルトはSiO2= 56 wt.% となる.このメルトは肥沃な同位体組成を持つが,安山岩質で,92 Maの未分化玄武岩の組成とは異なる.一方,SiO2に富むマグマがマントルウェッジを上昇する過程で,マグマとマントルの間で分化同化作用 (Assimilation and Fractional Crystallization: AFC) を起こすことが想定される.同化と分別に関与する相は,カンラン石 (Fo88) と直方輝石 (En90) および,金雲母 (XMg = 90) とした.主成分元素のマスバランス計算によると,単純混合メルトにカンラン石 34.4 % を付加し,直方輝石 39.8 % および金雲母 3.0 % 分別することで,92 MaのSr–Nd同位体に肥沃した未分化玄武岩質のマグマ組成を再現できた (SSR = 0.12).また,この分別相の量比を用いて,AFC のモデル計算 (DePaolo, 1981) から微量元素組成を求め,娘マグマの組成と比較した結果,組成パターンは概ね一致した.したがって,この結果は安山岩質混合メルトがマントルウェッジを上昇中にマントルカンラン石を同化しつつ直方輝石と金雲母を分別して未分化玄武岩マグマへ組成変化したことを示す.
このようなマントルウェッジ内での混合 (simple Mixing) とそれに引き続くマントルとの同化分別結晶 (AFC) ,さらに同位体組成を含めた組成変化 (Compositional cHange) の過程について本研究では MACH モデルとして提案する.
山陽帯と領家帯の苦鉄質岩はεNdI 値の幅が広く,正と負両方を示すが,100 Ma 以前の苦鉄質岩の同位体組成は枯渇している.また,山陽帯,領家帯,九州地方の花崗岩および苦鉄質岩は 100 Ma 以後,経年的に同位体組成が肥沃化する傾向にある.以上まとめると,西南日本直下の白亜紀マントルは 110-100 Ma を境に εNdI 値が正から負へと変化し始めた.これは140 Ma 以後東アジア東縁部へのプレート沈み込み速度の増加と,この時期に想定される構造侵食に伴うマントルウェッジへの堆積物の供給に起因し,結果的にマントルウェッジの組成が経年的に不均質化・肥沃化した結果と考えられる.
本研究で検討した苦鉄質岩は未分化あるいはそれに近い組成を示すことから,起源マントルの同位体組成を反映していると考えられる.そこで,92 Maの比較的未分化で負のεNdI値を示す苦鉄質マグマの成因についてマントルウェッジ内のマグマ混合で形成可能か検討した.計算にあたり,SiO2= 66 wt.%の沈み込む泥岩に由来するメルト (εNdI 値 = -7) と九州の未分化玄武岩質マグマ (SiO2 = 52 wt%, εNdI 値 = +4) を端成分と仮定した.その結果,92 Ma の肥沃な同位体組成を再現するためには,端成分の大陸地殻由来のメルト (花崗岩質メルト) とマントル起源のメルト(玄武岩質メルト)を7:3で混合する必要があり,単純混合メルトはSiO2= 56 wt.% となる.このメルトは肥沃な同位体組成を持つが,安山岩質で,92 Maの未分化玄武岩の組成とは異なる.一方,SiO2に富むマグマがマントルウェッジを上昇する過程で,マグマとマントルの間で分化同化作用 (Assimilation and Fractional Crystallization: AFC) を起こすことが想定される.同化と分別に関与する相は,カンラン石 (Fo88) と直方輝石 (En90) および,金雲母 (XMg = 90) とした.主成分元素のマスバランス計算によると,単純混合メルトにカンラン石 34.4 % を付加し,直方輝石 39.8 % および金雲母 3.0 % 分別することで,92 MaのSr–Nd同位体に肥沃した未分化玄武岩質のマグマ組成を再現できた (SSR = 0.12).また,この分別相の量比を用いて,AFC のモデル計算 (DePaolo, 1981) から微量元素組成を求め,娘マグマの組成と比較した結果,組成パターンは概ね一致した.したがって,この結果は安山岩質混合メルトがマントルウェッジを上昇中にマントルカンラン石を同化しつつ直方輝石と金雲母を分別して未分化玄武岩マグマへ組成変化したことを示す.
このようなマントルウェッジ内での混合 (simple Mixing) とそれに引き続くマントルとの同化分別結晶 (AFC) ,さらに同位体組成を含めた組成変化 (Compositional cHange) の過程について本研究では MACH モデルとして提案する.