講演情報
[R6-P-12]新潟県青海地域に分布する白亜紀火山岩類に含まれるザクロ石斑晶の化学組成
*髙橋 俊郎1、栗原 美聡2、橋本 優生1、Satish-Kumar Madhusoodhan1、Sajeev Krishnan3 (1. 新潟大学、2. DOWAホールディングス(株)、3. Indian Institute of Science)
キーワード:
ザクロ石斑晶
新潟県西部の青海地域から富山県の県境付近には,後期白亜紀の火成活動で形成された親不知火山岩類や白亜紀堆積岩類に貫入する火成岩が分布している.これら親不知火山岩類や貫入岩類の一部は,ザクロ石斑晶が観察されることで特徴づけられる.一般的な島孤火成岩にザクロ石が斑晶として出現することは珍しく,当地域に分布するこれらザクロ石斑晶を含む火山岩類についての岩石学的検討はほとんどされていない.そこで,本研究ではこれらのザクロ石斑晶について化学分析と全岩化学組成分析を行った.
地質概説:新潟県と富山県の県境にあたる境川流域には,主に砂岩から構成される白亜紀堆積岩類(来馬層群や手取層群に対比される)が広く分布しており,それらに親不知火山岩類が累重する.親不知火山岩類は主に安山岩質の火砕岩類から成り,玄武岩質安山岩から安山岩の溶岩を複数枚挟在する.火砕岩の一部には溶結構造が観察され,その溶結レンズにザクロ石斑晶が含まれている.一方,白亜紀堆積岩類には時代不詳の貫入岩を含め,ザクロ石斑晶をもつデイサイト岩脈が各所に貫入している.
親不知火山岩類のザクロ石斑晶を含む溶結レンズの記載岩石学的特徴:斑晶鉱物組み合わせは,斜長石,黒雲母,角閃石,ザクロ石から成り,稀に石英を含む.黒雲母,角閃石および石基の火山ガラスの大部分は変質している.
貫入岩の記載岩石学的特徴:斑晶鉱物組み合わせは,斜長石,角閃石およびザクロ石から成る.ザクロ石以外の石基を含む鉱物はほぼ全て変質している.ザクロ石斑晶の量は少なくモードで数%程度である.ザクロ石斑晶は特徴的に外形が不規則であり,おそらく斜長石からなるコロナに囲まれていたと推察される.
ザクロ石斑晶の化学組成:これらザクロ石斑晶について,EPMAによる化学分析を行なった.親不知火山岩類のザクロ石(コアおよびリム)はAlm=59-72mol%,Pyo=6-15mol%,Grs=15-26mol%,Sps=3-7mol%の組成範囲を示し,貫入岩のザクロ石はAlm=62-68mol%,Pyo=7-18mol%,Grs=13-17mol%,Sps=3-7mol%の組成範囲であった.親不知火山岩類と貫入岩のザクロ石斑晶の組成範囲はおよそ重複するが,貫入岩の方が組成範囲が狭い傾向がある.ザクロ石の線分析結果の多くは明確な累帯構造を示さず,比較的平滑か弱い波動累帯構造を示し,組成が大きく異なるコアを有するようなザクロ石は観察されなかった.
ザクロ石デイサイト貫入岩の全岩化学組成:境川に露出する岩体について全岩化学組成分析を行った.SiO2=65wt%,Na2O+K2O=6.5wt%を示し,Al2O3/(CaO+Na2O+K2O)=1.05であった.
考察:斑晶鉱物組み合わせ,およびザクロ石斑晶の化学組成の類似性から,親不知火山岩類のザクロ石斑晶はザクロ石デイサイト貫入岩と類似した組成のマグマから晶出した可能性が考えられる.ザクロ石デイサイト貫入岩のザクロ石斑晶の特徴的な外形は,ザクロ石が不安定となり(例えば上昇過程での減圧),斜長石のコロナが形成された可能性がある.これまでに報告されているI-type火成岩とS-type花崗岩および泥質岩起源変成岩に含まれるザクロ石の化学組成と比較すると,親不知火山岩類および貫入岩のザクロ石斑晶はI-type火成岩が示す組成範囲と一致する.以上のことから,白亜紀における陸孤火成活動において,I-type珪長質マグマが結晶分化することでザクロ石斑晶が晶出した可能性が指摘される.
地質概説:新潟県と富山県の県境にあたる境川流域には,主に砂岩から構成される白亜紀堆積岩類(来馬層群や手取層群に対比される)が広く分布しており,それらに親不知火山岩類が累重する.親不知火山岩類は主に安山岩質の火砕岩類から成り,玄武岩質安山岩から安山岩の溶岩を複数枚挟在する.火砕岩の一部には溶結構造が観察され,その溶結レンズにザクロ石斑晶が含まれている.一方,白亜紀堆積岩類には時代不詳の貫入岩を含め,ザクロ石斑晶をもつデイサイト岩脈が各所に貫入している.
親不知火山岩類のザクロ石斑晶を含む溶結レンズの記載岩石学的特徴:斑晶鉱物組み合わせは,斜長石,黒雲母,角閃石,ザクロ石から成り,稀に石英を含む.黒雲母,角閃石および石基の火山ガラスの大部分は変質している.
貫入岩の記載岩石学的特徴:斑晶鉱物組み合わせは,斜長石,角閃石およびザクロ石から成る.ザクロ石以外の石基を含む鉱物はほぼ全て変質している.ザクロ石斑晶の量は少なくモードで数%程度である.ザクロ石斑晶は特徴的に外形が不規則であり,おそらく斜長石からなるコロナに囲まれていたと推察される.
ザクロ石斑晶の化学組成:これらザクロ石斑晶について,EPMAによる化学分析を行なった.親不知火山岩類のザクロ石(コアおよびリム)はAlm=59-72mol%,Pyo=6-15mol%,Grs=15-26mol%,Sps=3-7mol%の組成範囲を示し,貫入岩のザクロ石はAlm=62-68mol%,Pyo=7-18mol%,Grs=13-17mol%,Sps=3-7mol%の組成範囲であった.親不知火山岩類と貫入岩のザクロ石斑晶の組成範囲はおよそ重複するが,貫入岩の方が組成範囲が狭い傾向がある.ザクロ石の線分析結果の多くは明確な累帯構造を示さず,比較的平滑か弱い波動累帯構造を示し,組成が大きく異なるコアを有するようなザクロ石は観察されなかった.
ザクロ石デイサイト貫入岩の全岩化学組成:境川に露出する岩体について全岩化学組成分析を行った.SiO2=65wt%,Na2O+K2O=6.5wt%を示し,Al2O3/(CaO+Na2O+K2O)=1.05であった.
考察:斑晶鉱物組み合わせ,およびザクロ石斑晶の化学組成の類似性から,親不知火山岩類のザクロ石斑晶はザクロ石デイサイト貫入岩と類似した組成のマグマから晶出した可能性が考えられる.ザクロ石デイサイト貫入岩のザクロ石斑晶の特徴的な外形は,ザクロ石が不安定となり(例えば上昇過程での減圧),斜長石のコロナが形成された可能性がある.これまでに報告されているI-type火成岩とS-type花崗岩および泥質岩起源変成岩に含まれるザクロ石の化学組成と比較すると,親不知火山岩類および貫入岩のザクロ石斑晶はI-type火成岩が示す組成範囲と一致する.以上のことから,白亜紀における陸孤火成活動において,I-type珪長質マグマが結晶分化することでザクロ石斑晶が晶出した可能性が指摘される.