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[R7-P-03]マイロナイト中に含まれる再結晶石英の CL スペクトルの変化

*福島 夕紀子1、太田 亨1、高木 秀雄 (1. 早大)
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キーワード:

石英、マイロナイト、SEM-CL、カソードルミネッセンス、CLスペクトル

【はじめに】地殻を構成する主要な鉱物である石英は SiO­2 という単純な組成ではあるが,結晶成長時の温度や圧力の違いにより,転位や点欠陥といった結晶構造の変異や不純物元素 (Al3+, Ti4+, Fe3+ など) と Si4+ の置換を生じる.また形成後に受けた温度や圧力によっても欠陥の解消や新たな生成,不純物の移動などを生じる.こういった物質に内在する構造欠陥や置換不純物中心を鋭敏に検出する手法の1つが,物質に電子線を照射した際に生じる発光現象であるカソードルミネッセンス (Cathodoluminescence; CL) である.断層岩に対してCL像を用いた例は数多く存在する.破砕された鉱物と二次的に形成された鉱物の識別 (e.g., Bestmann et al, 2011; Shimamoto et al, 1991) に使用されるほか,近年はマイロナイトにおいて,TitaniQ 温度計のためのTi濃度の定性的または半定量的なマップとして数多く利用されている.その一方で CL スペクトルを解析した例は見られない.そこで筆者は,様々な断層岩のCLスペクトルを測定してきた.早稲田大学は 2011 年に MonoCL4 を購入し,CL スペクトルの測定を行ってきたが,長らく装置の波長ごとに異なる感度を補正し、測定データを本来の発光強度分布に近づける処理 (以後,感度補正) を行っていなかった.感度補正後,発光中心が知られている任意のガウスピーク (e.g., Götze et al., 2021; 2001; Stevens-Kalceff, 2009)でフィッティングした結果を初めて公開する.【手法】SEM-CL 分析は早稲田大学設置の SEM-CL (S-3400N, Hitachi; MonoCL4, Gatan)を使用し, 250–950 nm の CL スペクトルを 5 nm ステップで測定した.CLスペクトルは加速電圧 15 eV の連続ビームを用いて室温で励起した.測定数は各領域につき 2–3 個石英集合体を対象とし,各集合体 5–10 点ずつ測定した.測定値からバックグラウンドを除去した後,DigitalMicrograph (Gatan) 付属のデータにて感度補正を行った.感度補正は検出器補正,分光素子 (主に回折格子) 補正,光学素子 (e.g., ミラー, レンズ) 補正の3つに分けられるが,MonoCL4 はレンズの代わりに凹面鏡による光学系を採用し,レンズを最小枚にした結果,波長特性がフラットであるため,光学素子補正は行っていない.その後,R にてピークフィッティングを行った.ガウスピークの選別は BIC とカイ二乗平均の比較にて行い,その結果,7 個のガウスピークで構成されることが分かった.面積比を用いてilr変換を行った。【測定試料】同じ薄片内で粒径の変化が見られたスコットランド Outer Hebrides 諸島 South Harris Shear Zone に発達した断層岩中のマイロナイトと,複数薄片にまたがるが短期間で測定を行った瀬戸内海にある手島の領家古期花崗岩に発達する小剪断帯のマイロナイトを例として示す.【結果と解釈】一般に石英の CL スペクトルは赤色発光 (~1.9 eV) と青色発光 (~3.0 eV) の 2 つのピークを持つ.粒径の減少に伴い,全体の発光強度が減少するとともに,相対的に赤色発光は増加し,青色発光は減少する変化が見られた.赤色発光で増加傾向を示したのが 1.9 eV と 1.95 eV (どちらも NBOHC),青色発光で大きく減少したのが 3.2 eV ([AlO4/M+] centre, M+= Li+,Na+,K+,H+) であった.粒径減少に伴い,[AlO4/M+] centre が解離し,陽イオンが移動することで NBOHC が形成 (King et al., 2012) される変化が生じたことが示唆される.
【引用文献】Bestmann et al. (2011), J. Struct. Geol., 33, 169–186.; Götze et al. (2021), Mineral. Mag., 85, 639–664.; Götze et al. (2001), Mineral. Petrol., 71, 225–250.; King et al. (2012), Radiat. Meas., 46, 1–9.; Shimamoto et al. (1991), J. Struct. Geol. 13, 967–973.; Stevens-Kalceff. (2009), Mineral. Mag. 73 521–541.

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