講演情報
[R8-06]四国中央部三波川帯の灰曹長石-黒雲母帯における温度見積りの評価
*纐纈 佑衣1、荻野 竣右1 (1. 名古屋大学・院環境)
キーワード:
三波川帯、灰曹長石-黒雲母帯、炭質物ラマン温度計、ざくろ石-黒雲母地質温度計
四国中央部三波川帯には泥質片岩中に含まれる指標鉱物を用いて,緑泥石帯,ざくろ石帯,曹長石-黒雲母帯,灰曹長石-黒雲母帯の4つに変成分帯がなされている.そのうち,もっとも高変成度部とされている灰曹長石-黒雲母帯は,熱力学計算によって610±25℃と見積もられている(Enami, 1983).一方,炭質物の結晶化度から最高被熱温度を見積る炭質物ラマン温度計では,汗見川地域において平均温度が480-550℃程度と見積もられており(Kouketsu et al., 2021),600℃を越える高温サンプルは報告されていない.その理由として,(1)熱力学データセットが古いため,熱力学計算で温度が高めに推定されている可能性,(2)炭質物ラマン温度計の温度上限(~650℃)に近いため,炭質物の結晶化度を用いた温度見積りの精度が落ちている可能性,(3)四国中央部における灰曹長石-黒雲母帯の温度に地域差がある可能性,などが考えられる.本研究では,(1)と(2)について,熱力学計算の再検証と炭質物ラマン温度計の高温領域における感度の検証を行った.
Enami (1983)で報告されている鉱物組成を用いて,ざくろ石-黒雲母温度計(Dasgupta et al. 1991)を適用した.また,シュードセクション解析を行って灰曹長石の安定領域を調べた.その結果,600℃前後の温度が制約され,熱力学計算では灰曹長石-黒雲母帯は先行研究と同様に高温であることが示された.一方で,炭質物ラマン温度計は見積り温度のヒストグラムを確認すると,単峰性ではなく双峰性の幅広い温度を示す傾向が見られ,600℃付近にも小さなピークがある事が確認された.この結果は,四国中央部三波川帯の灰曹長石-黒雲母帯において,炭質物ラマン温度計の見積り温度は過小評価している可能性が示唆された.炭質物ラマン温度計の過小評価の原因として,石墨の結晶方位によるD1-band強度の異方性の影響や,剪断による結晶化度の低下が考えられる.また,炭質物のラマンスペクトルは結晶化度が上がるほどピーク強度が弱くなるため,ノイズやベースラインの影響も受けやすくなり,低温領域の温度見積りよりも大きな誤差がつく可能性も考えられる.
上記の結果から,炭質物ラマン温度計において,上限温度に近い高温サンプルは,測定点を慎重に決定した上で,多くのデータを取得し,誤差ができるだけ小さくなるように評価する必要性が示された.また,別子地域と汗見川地域において最高到達温度が異なる可能性もあるため,今後は両地域を比較する必要もあると考えられる.
Enami (1983)で報告されている鉱物組成を用いて,ざくろ石-黒雲母温度計(Dasgupta et al. 1991)を適用した.また,シュードセクション解析を行って灰曹長石の安定領域を調べた.その結果,600℃前後の温度が制約され,熱力学計算では灰曹長石-黒雲母帯は先行研究と同様に高温であることが示された.一方で,炭質物ラマン温度計は見積り温度のヒストグラムを確認すると,単峰性ではなく双峰性の幅広い温度を示す傾向が見られ,600℃付近にも小さなピークがある事が確認された.この結果は,四国中央部三波川帯の灰曹長石-黒雲母帯において,炭質物ラマン温度計の見積り温度は過小評価している可能性が示唆された.炭質物ラマン温度計の過小評価の原因として,石墨の結晶方位によるD1-band強度の異方性の影響や,剪断による結晶化度の低下が考えられる.また,炭質物のラマンスペクトルは結晶化度が上がるほどピーク強度が弱くなるため,ノイズやベースラインの影響も受けやすくなり,低温領域の温度見積りよりも大きな誤差がつく可能性も考えられる.
上記の結果から,炭質物ラマン温度計において,上限温度に近い高温サンプルは,測定点を慎重に決定した上で,多くのデータを取得し,誤差ができるだけ小さくなるように評価する必要性が示された.また,別子地域と汗見川地域において最高到達温度が異なる可能性もあるため,今後は両地域を比較する必要もあると考えられる.
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