講演情報
[R8-07]深紫外顕微ラマン分光法を利用した岩石片からの変成温度推定
*中村 佳博1、髙橋 幸士1、金木 俊也1 (1. 産業技術総合研究所)
キーワード:
炭質物、深紫外顕微ラマン分光法、石墨化
炭質物のラマンスペクトルに基づく変成温度推定法は、堆積岩であれば試料を選ばず岩石の変成温度を簡便かつ高精度に評価可能であるため、地球科学分野で広く利用されている。一方で1) 変成温度を推定する際のスペクトルフィッティング手法、2) 励起レーザーや薄片研磨による試料ダメージ、3) 試料から発生する蛍光 (自家蛍光)によって分析精度が大きく左右される問題を抱えている。1)や2)に関しては、pythonを用いた自動解析法の確立や、適切な分析試料選定法の確立によって問題が解決されつつある。一方で、炭質物そのものから発生する自家蛍光は、通常の可視光レーザーを用いた顕微分光分析では回避不可能であり、蛍光の影響によって解析に耐えうるラマンスペクトルを取得することは技術的に困難であった。
そこで炭質物由来の蛍光ノイズの影響を受けずラマンスペクトルを取得することを目的に、炭質物分析に特化した深紫外顕微ラマン分光法の確立を行った。我々は炭質物から発生する強い自家蛍光領域 (600~700nm)から遠く離れた深紫外領域 (270~290nm)でラマンスペクトルを取得することで、蛍光の影響がないラマンスペクトルを取得することに成功した。事前に深紫外レーザーで最適な分析条件を決定し、<38℃から600℃までの変成温度を記録する22試料の岩石を選定した。深紫外顕微ラマン分光法において、有機物や炭質物は共鳴ラマン現象を引き起こすため、試料中の炭質物が極微量であっても岩石片から高精度にラマンスペクトルを取得可能である。そのため試料を破壊せず、岩石片を利用して分析を行った。深紫外レーザーで得られた炭質物のラマンスペクトルをpythonコードで自動解析した結果、Gバンド位置、Gバンド半値幅、そしてGバンドとDバンドの端数間距離(RBS)と変成温度に強い相関を見出した。最も強い相関を示すGバンド半値幅と変成温度では、以下の式が83℃から555℃の間で成立する。
T (℃) ±50 ℃ = –9.101 * (G-band FWHM, cm⁻¹) + 712.3 [ R2 = 0.966]
本手法の最も大きな利点は、露頭から採取した岩石片をそのまま用いて、変成温度を高精度に評価できる点である。従来指摘されていた研磨による非晶質化の影響やグラファイト粒子の配向性の問題を考慮する必要がなく、人的及び分析バイアスを可能な限り排除できる。この新手法を利用することで、従来法では、炭質物の自家蛍光によって解析困難であった極低温領域 (200℃以下)でのラマンスペクトル解析が可能となり、岩石片から従来より広範囲の温度領域で高精度に変成温度推定が可能となった。深紫外顕微ラマン分光法は炭質物だけでなく、強い蛍光を発する岩石や生体試料の顕微分光分析にも応用可能であり、今後は地球科学分野における新しい利用法の開拓が期待される。
そこで炭質物由来の蛍光ノイズの影響を受けずラマンスペクトルを取得することを目的に、炭質物分析に特化した深紫外顕微ラマン分光法の確立を行った。我々は炭質物から発生する強い自家蛍光領域 (600~700nm)から遠く離れた深紫外領域 (270~290nm)でラマンスペクトルを取得することで、蛍光の影響がないラマンスペクトルを取得することに成功した。事前に深紫外レーザーで最適な分析条件を決定し、<38℃から600℃までの変成温度を記録する22試料の岩石を選定した。深紫外顕微ラマン分光法において、有機物や炭質物は共鳴ラマン現象を引き起こすため、試料中の炭質物が極微量であっても岩石片から高精度にラマンスペクトルを取得可能である。そのため試料を破壊せず、岩石片を利用して分析を行った。深紫外レーザーで得られた炭質物のラマンスペクトルをpythonコードで自動解析した結果、Gバンド位置、Gバンド半値幅、そしてGバンドとDバンドの端数間距離(RBS)と変成温度に強い相関を見出した。最も強い相関を示すGバンド半値幅と変成温度では、以下の式が83℃から555℃の間で成立する。
T (℃) ±50 ℃ = –9.101 * (G-band FWHM, cm⁻¹) + 712.3 [ R2 = 0.966]
本手法の最も大きな利点は、露頭から採取した岩石片をそのまま用いて、変成温度を高精度に評価できる点である。従来指摘されていた研磨による非晶質化の影響やグラファイト粒子の配向性の問題を考慮する必要がなく、人的及び分析バイアスを可能な限り排除できる。この新手法を利用することで、従来法では、炭質物の自家蛍光によって解析困難であった極低温領域 (200℃以下)でのラマンスペクトル解析が可能となり、岩石片から従来より広範囲の温度領域で高精度に変成温度推定が可能となった。深紫外顕微ラマン分光法は炭質物だけでなく、強い蛍光を発する岩石や生体試料の顕微分光分析にも応用可能であり、今後は地球科学分野における新しい利用法の開拓が期待される。
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン