講演情報
[R8-12]東南極プリンスオラフ海岸東部,ちぢれ岩および竜宮岬に分布する片麻岩類のSHRIMP U-Pbジルコン年代
*馬場 壮太郎1、堀江 憲路2、竹原 真美2、中野 伸彦3、加々島 慎一4、外田 智千2、亀井 淳志5、加納 隆6 (1. 琉球大学、2. 国立極地研究所、3. 九州大学、4. 山形大学、5. 島根大学、6. 山口大学)
キーワード:
東南極、U-Pbジルコン年代
東南極のドロンイングモードランド東部(35°E) からエンダビーランド西部(45°E)にかけての地域には,エディアカラ紀〜カンブリア紀の変動帯であるリュツォ・ホルム岩体が分布する(Hiroi et al., 1991; Shiraishi et al., 1994; 2003).Baba et al.(2022)は,プリンスオラフ海岸東部のあけぼの岩の角閃岩相片麻岩について高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHIRIMP)を用いて変成年代の解析を行い,ジルコンのTi含有量とその年代値に基づき,角閃岩相の変成作用が937 ± 6 Maのトニアンに生じたことを明らかにした.このトニアンを示す変成作用は,日の出岩の西方に位置する二番岩からも報告され(Mori et al., 2023; Kitano et al., 2023),類似した岩体がまとまって分布することを示唆している.これらの結果は,全てのリュツォ・ホルム岩体がカンブリア紀の広域変成作用を受け,変成度が累進的に上昇するという従来の考えを否定する.あけぼの岩の東方には未踏査露岩が多く,その変成作用,変成年代,原岩の情報はトニアンの年代を示す変成岩体の延長と形成過程を明らかにするうえで重要である.本報告では,これまで未踏査であったちぢれ岩に露出する変成岩(63次南極地域観測隊採取)とその東方に分布する竜宮岬に露出する変成岩(19次南極地域観測隊採取)を対象にSHRIMPによるU-Pbジルコン年代測定を実施したので,その結果を報告する.
ちぢれ岩は昭和基地の東方,約180 kmに位置する露岩で,(1)黒雲母に富むザクロ石珪質片麻岩,(2)角閃石に富むザクロ石珪質片麻岩,(3)ザクロ石珪質片麻岩,(4)層状片麻岩(巨晶ザクロ石角閃岩を含む),(5)角閃石黒雲母片麻岩から構成され,これらに角閃岩,ペグマタイト,玄武岩などが貫入している.(2)と(5)に区分される2試料(CHJ1403,CHJ1515)についてU-Pbジルコン年代測定を実施した.その結果,CHJ1403に含まれるジルコンのコア・マントルから1096±9 Ma(weighted mean 204Pb corrected 238U/206Pb age 以下同様, N=35),最外縁のリムから969±23 Ma (N=20)が得られた.CHJ1515のコアはパッチ状組織を示すものが多く,一部は再結晶した領域が認められ,これらの年代は1024±8 Ma(N=22)であった.それらの最外縁リムや内部組織を欠く粒子からは970±10 Ma(N=11)が得られた.
竜宮岬はちぢれ岩の東方,約40 kmに位置する露岩で,主に含ホルンブレンド黒雲母片麻岩,角閃岩,黒雲母ホルンブレンド片麻岩,ザクロ石黒雲母片麻岩,優白質白雲母黒雲母片麻岩,優白質角閃石黒雲母片麻岩,緑簾石単斜輝石ホルンブレンド片麻岩から構成され,結晶質石灰岩の薄層を伴う(Nakai et al.,1980).含ホルンブレンド黒雲母片麻岩(W419)とザクロ石黒雲母片麻岩(W411)についてU-Pbジルコン年代測定を実施した.W419に含まれるジルコンの中で,Th/U比の高いコア,Th/U比の低いコア・マントル,Th/U比の低いマントル・リム・内部組織を欠く粒子から,1021±10 Ma(N=31),984±5 Ma(N=15),546±2 Ma(N=28)の年代がそれぞれ得られた.W411の oscillatory zoningを示すコアからは1040±10 Ma(N=14),リムや内部組織を欠く粒子からは545±2 Ma(N=34)の年代がそれぞれ得られた.いくつかのコアはコンコーディア上の950〜900 Maにプロットされる.
ちぢれ岩および竜宮岬の岩石試料には,1100 Maよりも古い年代を示すジルコンは認められなかった.両地域のジルコンコア年代は,あけぼの岩のコア年代の範囲内(1120〜1014 Ma,N=26)を示す.ちぢれ岩の2試料のジルコンリム年代は約970 Maを示し,変成年代と推察されるが,類似した年代が竜宮岬から採取されたW419からも得られた(低Th/U比のジルコンコアおよびマントル:984±5 Ma).竜宮岬の2試料については,ジルコンリムの多くが約545 Ma付近に集中してプロットされ,主要な変成年代と考えられる.今回の年代測定結果は,トニアンの変成作用がちぢれ岩および竜宮岬でも確認されること,加えて,竜宮岬では約545 Maに強い変成変形作用を受けたことを示唆する.トニアンに変成作用を被った地質体は二番岩から日の出岬,あけぼの岩,ちぢれ岩を経て竜宮岬までの約90 kmに分布し,西端の二番岩(Mori et al.,2023),東端の竜宮岬はカンブリア紀に再動したことが想起される.
ちぢれ岩は昭和基地の東方,約180 kmに位置する露岩で,(1)黒雲母に富むザクロ石珪質片麻岩,(2)角閃石に富むザクロ石珪質片麻岩,(3)ザクロ石珪質片麻岩,(4)層状片麻岩(巨晶ザクロ石角閃岩を含む),(5)角閃石黒雲母片麻岩から構成され,これらに角閃岩,ペグマタイト,玄武岩などが貫入している.(2)と(5)に区分される2試料(CHJ1403,CHJ1515)についてU-Pbジルコン年代測定を実施した.その結果,CHJ1403に含まれるジルコンのコア・マントルから1096±9 Ma(weighted mean 204Pb corrected 238U/206Pb age 以下同様, N=35),最外縁のリムから969±23 Ma (N=20)が得られた.CHJ1515のコアはパッチ状組織を示すものが多く,一部は再結晶した領域が認められ,これらの年代は1024±8 Ma(N=22)であった.それらの最外縁リムや内部組織を欠く粒子からは970±10 Ma(N=11)が得られた.
竜宮岬はちぢれ岩の東方,約40 kmに位置する露岩で,主に含ホルンブレンド黒雲母片麻岩,角閃岩,黒雲母ホルンブレンド片麻岩,ザクロ石黒雲母片麻岩,優白質白雲母黒雲母片麻岩,優白質角閃石黒雲母片麻岩,緑簾石単斜輝石ホルンブレンド片麻岩から構成され,結晶質石灰岩の薄層を伴う(Nakai et al.,1980).含ホルンブレンド黒雲母片麻岩(W419)とザクロ石黒雲母片麻岩(W411)についてU-Pbジルコン年代測定を実施した.W419に含まれるジルコンの中で,Th/U比の高いコア,Th/U比の低いコア・マントル,Th/U比の低いマントル・リム・内部組織を欠く粒子から,1021±10 Ma(N=31),984±5 Ma(N=15),546±2 Ma(N=28)の年代がそれぞれ得られた.W411の oscillatory zoningを示すコアからは1040±10 Ma(N=14),リムや内部組織を欠く粒子からは545±2 Ma(N=34)の年代がそれぞれ得られた.いくつかのコアはコンコーディア上の950〜900 Maにプロットされる.
ちぢれ岩および竜宮岬の岩石試料には,1100 Maよりも古い年代を示すジルコンは認められなかった.両地域のジルコンコア年代は,あけぼの岩のコア年代の範囲内(1120〜1014 Ma,N=26)を示す.ちぢれ岩の2試料のジルコンリム年代は約970 Maを示し,変成年代と推察されるが,類似した年代が竜宮岬から採取されたW419からも得られた(低Th/U比のジルコンコアおよびマントル:984±5 Ma).竜宮岬の2試料については,ジルコンリムの多くが約545 Ma付近に集中してプロットされ,主要な変成年代と考えられる.今回の年代測定結果は,トニアンの変成作用がちぢれ岩および竜宮岬でも確認されること,加えて,竜宮岬では約545 Maに強い変成変形作用を受けたことを示唆する.トニアンに変成作用を被った地質体は二番岩から日の出岬,あけぼの岩,ちぢれ岩を経て竜宮岬までの約90 kmに分布し,西端の二番岩(Mori et al.,2023),東端の竜宮岬はカンブリア紀に再動したことが想起される.
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン