講演情報

[S1-07]ケイ酸塩メルトの非ニュートン性と分子スケール構造の関係:せん断変形下のケースについて

*奥村 聡1、上杉 健太朗2、後藤 章夫1、松本 一久1、坂巻 竜也1、安武 正展2 (1. 東北大学、2. JASRI/SPring-8)
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キーワード:

ケイ酸塩メルト、せん断変形、分子スケール構造、非ニュートン流体、時分割X線回折

ケイ酸塩メルトは高い変形速度でシェアシニングや破砕など非ニュートン挙動を示すが,その分子スケールでの起源は不明である。本研究では,せん断変形下におけるケイ酸塩メルトの分子構造変化を調べるために,独自に作成したせん断変形試験機とSPring-8の放射光X線を利用したケイ酸塩メルトの時分割X線回折実験を行った。実験では,酸化物・炭酸塩の試薬から合成した安山岩組成のケイ酸塩メルトに対して,700-800℃の温度でせん断変形実験を行った。試料は~1×10×10㎜の板状であり,この板状試料の下部を固定し,上部を0.001–0.01 mm/sで変形させた。せん断実験中,100ミリ秒ごとに2次元X線回折パターンを取得し, First Sharp Diffraction Pattern(FSDP)のピーク位置の変化を調べた。FSDPのピーク位置はメルト中の中距離構造を構成するSiO4四面体が作るリングの平均サイズを反映する。実験の結果,マクロな変形挙動とリングサイズの変化は主に3パターンに分類できた。まず800℃で0.001 mm/s以下の変形速度では,試料は破砕せずに変形を続けた。FSDPのピーク位置の変化から推定されるリングサイズの明確な変化は見られなかった。次に,800℃で0.002–0.01 mm/sの変形速度の場合,試料は破砕せず変形を続けるが,リングはせん断方向に対して30~45°方向に大きく圧縮することが分かった。最後に,700℃と750℃で0.01 mm/sの変形速度,さらに800℃で0.05 mm/sでは,試料が破砕し,リングはせん断変形方向に対して30~45°方向に圧縮され,一方でそれと直交する方向へやや膨張した。以上のように,破砕はしないが十分に歪速度が大きい条件(本研究の800℃,0.01mm/sなど)では,メルトが破砕するケースよりもSiO4四面体が形成するリングが大きく歪んでいることが分かった。この条件では,見かけ粘性が歪速度の増加に伴い低下するシェアシニングが起こっている。リングの大きな歪がシェアシニングと何かしらの関係があるのかもしれない。