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[S3-02]rDACによる高圧変形実験試料のXRDとEBSDを用いた微細構造および結晶選択配向解析の検討

*夏井 文凜1、東 真太郎1、安武 正展2、小山 雪乃丞3、岡﨑 啓史4,5、上杉 健太朗2、河口 沙織2、野村 龍一6、太田 健二1 (1. Science Tokyo、2. JASRI、3. 東大、4. 広大、5. JAMSTEC、6. 京大)
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キーワード:

電子線後方散乱回折、フェロペリクレース、変形実験、X線回折、結晶方位選択配向

回転式ダイヤモンドアンビルセル(rDAC)は、地球内部の全圧力条件下での変形実験が可能な装置であり、近年、鉱物の高温高圧変形実験の結果が報告されている。rDACを用いた変形実験は、SPring-8の放射光X線と組み合わせるのが一般的である。これまでrDACにおける試料の結晶方位選択配向(CPO)の決定には、X線回折測定(XRD)を用いてきた。一方で、変形実験中のXRDによるCPO測定にはいくつかの制約がある。例えば、rDACの実験構成では、XRDデータは一方向からしか取得できず、変形実験中の試料は回転軸に対して60度傾いている。その結果、60度の傾きに対応する限られた範囲のポールフィギュアしか得られない。この限られた範囲のデータを基に全体のポールフィギュア(180°範囲)が再構成されるが、再構成されたデータの完全性は十分に検証されていない。また、X線測定では、多結晶試料の粒径や粒子形状などの個別の結晶の詳細な評価が困難である。 本研究では、rDACを用いた高圧変形実験試料の減圧回収後のXRDおよび電子後方散乱回折(EBSD)測定を実施し、WüstiteおよびFerropericlase試料の微細構造観察およびCPOの決定および比較を行った。変形実験はSPring-8 BL47XUにて、その場XRD測定を行いながら、圧力10-126 GPa、温度300-950 K、歪速度一定の条件でWüstite、Ferropericlaseに対して行った。CPO決定のための組織解析にはMaterial Analysis Using Diffraction(MAUD)による結晶方位分布関数(ODF)が組み込まれたRietveld解析を適用した。また、変形実験後の試料を減圧回収し、SPring-8 BL10XUにて多角度(-35°~35°)XRD測定を行い、同じくCPO決定を試みた。加えて、一部の減圧回収試料について集束イオンビーム(FIB)装置を用いて、EBSD測定箇所をピックアップしたのちに、SEM-EBSD(JSM-7000F, 日本電子)もしくはSEM-FIB-EBSD(Helios 5 UX, Thermo Fisher)を用いてEBSD測定を行った。 XRD測定結果の解析から得られたCPOは、変形直後の試料(BL47XUデータ)と減圧回収試料(BL10XUデータ)の両方で一致し、減圧時の変形がCPOに与える影響は少ないことが確認された。EBSD測定結果から得られたCPOはXRDの結果と調和的であった。また、EBSDマッピングから、同じ結晶内で結晶方位が連続的に変化する様子が観察され、変形実験時に試料は転位クリープにより変形したことが示唆された。変形実験中の1角度XRD測定・減圧回収後の多角度XRD測定・EBSD測定で得られたCPOの結果は調和的であり、各測定方法には目的に応じた適切な利用方法が考えられる。リアルタイムでの測定や実験中の応力-歪曲線を取得したい場合には、変形実験中の1角度XRD測定が適している。試料の複数箇所での測定や、ガスケット材のピークを回避したい場合には、減圧回収試料の多角度XRD測定が有効である。多結晶体試料の各粒子の結晶方位や粒子形状といった微細構造を解析したい場合には、EBSD測定を用いることで情報を取得できる。また、放射光施設を利用できない場合においても、EBSD測定は有効な手法である。目的や状況に応じて、適切な測定方法を選択・組み合わせることが重要であり、手法の特徴を理解し、研究対象や解析目的に最適な方法を選ぶことで、より高精度なデータを取得することが可能である。