講演情報

[1E02]沖縄から開発学を紡ぎ直す:日本の内なるポストコロニアル空間を再訪す

*汪 牧耘1、*古波藏 契2、*崎濱 紗奈1、*松原 直輝1 (1. 東京大学、2. 東京科学大学)

キーワード:

沖縄、日本の国際開発研究、脱植民地化、平和、開発/発展

1. 企画の背景
本RTは、「開発と平和を繋ぐ新たな発想と発信」を掲げる本全国大会において、沖縄研究と国際開発研究の関係を編み直すことを目的とする。沖縄は、戦後日本の開発と平和を考える上で不可欠な存在であるにもかかわらず、それを日本の国際開発研究の思想的・経験的拠点として捉える試みは十分になされてきたとは言い難い。敗戦から80年、JICA沖縄の設立から40年という節目に、沖縄という場を通じて、戦後日本の国際開発を再考することには意義があると考える。

2. 主要な論点
以下の論点を取り上げる予定である。

・ODAの対象でもあった沖縄における振興・賠償・援助の人・財・知の連続性から、国際開発の「国内/国際」という境界線を揺さぶる。
・植民地支配や米軍基地開発に潜む、加害/被害に回収しきれない沖縄の重層性を検討する。
・沖縄の「自立/依存」をめぐる構造的な課題に言及する。
・「対象」について客観的に記述するという態度が、時に「対象」を過度に客体化し、その結果当事者性を遠ざけるという、研究態度の是非を問う。

これらの論点を、①沖縄の近現代史(古波藏発表)、②沖縄の思想史(崎濱発表)、③日本の援助行政と沖縄の位置付け(松原発表)といった角度から切り込み、沖縄研究・国際開発研究を「脱植民地化」という観点から連続的に検討する。

3. 期待される成果
議論を踏まえて、日本の国際開発研究において沖縄が十分に取り上げられてこなかった要因を分析し、該当分野を刷新する可能性を見出したい。沖縄を、内/外、グローバル/ローカル、そして開発に潜む平和/暴力といった二項対立や矛盾が凝集する場として再認識し、従来の開発理論が前提とする国民国家の枠組みや中心・周縁の二分法を批判的に考察することも可能であろう。沖縄の研究者・実践者と国際開発研究コミュニティの連携を深め、日本における国際開発研究を照射しながら、該当分野の脱植民地化の理論・実践を築くことを目指す。

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