講演情報
[1H04]サービス産業主導の経済発展における金融部門の発展:フィリピン経済の事例
*奥田 英信1 (1. 帝京大学)
キーワード:
金融部門の発展、サービス産業主導の経済発展、フィリピン事例
経済発展と金融部門の発展との関係については多くの研究がされてきた。東南アジア諸国の金融発展と経済発展との関連についても、寺西・他(2008)『アジアの経済発展と金融システム』東洋経済新報社、などで取り上げられてきたが、その中心的な課題は工業化による経済成長と金融部門の発展との関係性であった。近年のフィリピン経済は比較的高い経済成長率を維持しており、M2/GDP比率などで見る限り金融深化も改善している。しかしフィリピンの経済構造は製造業比率が約29%にとどまりサービス産業が約63%を占めており、従来の東南アジア諸国の事例とは異なる特徴を持っている。本研究の目的は、近年のフィリピンのような内需・送金主導の成長モデルは、金融セクターの発展にどのような独自性をもたらしているかを検討することである。具体的には、製造業を中核として経済発展を進めてきた他の東南アジア諸国の金融発展と近年のフィリピンの金融発展とを対比しつつ、その特徴と問題点を検討する。本研究による暫定的な結論としては次のことが指摘できる。第1に、サービス業と送金に支えられた内需主導型の経済構造は、金融セクターに「家計・中小企業寄り」「為替・送金インフラ重視」「デジタル包摂加速」という特徴をもたらしている。第2に、このような経済構造においては、製造業主導モデルとは異なるチャネル・商品設計・規制政策が求められており、金融部門の発展経路は従来の東南アジア諸国のものとは異なってくる。従って、第3に、サービス業と送金に支えられた内需主導型の経済だ今後も持続的成長を続けることが難しいならば、これからの金融部門の発展は楽観できないと思われる。
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