講演情報

[1H09]地域(農村)開発のイノベーションーWEB3.0 は限界を打ち破ることができるか?

*林 薫1,2 (1. 文教大学(2023年3月31日退職)、2. グローバル・ラーニング・サポート・コンサルタンツ)

キーワード:

折り畳み、自律型分散組織(DAO)、非代替性トークン(NFT)、住民組織、地域アイデンティティ

1. 研究の背景およびリサーチクエスチョン
人口減少と高齢化は今や日本の問題にとどまらず、世界の各地で同じような問題が起きている。この問題が国際開発学会のテーマの一つになってから久しく、チェンジメーカーの必要性、外部者の重要性、交流人口の拡大などはこれまで多く語られてきている。しかし、インパクトが大きな成果はなかなか見つけがたい。このブレイク・スルーになると思われる方向の一つは、最新の技術の活用、特にWEB3.0の活用であると考えられる。筆者がこれまで何回も足を運んでいる新潟県長岡市山古志では、ブロックチェインの技術を応用した非代替性トークン(NFT:Non Fungible Token)を仮想通貨にて全世界に向け発行し、これを地域の意思決定への「投票権」と位置付けている。人口800人弱の住民と1000人以上のNFT所有者が対等に地域のガバナンスに関与、「村民」として活動している。実際に訪問する「仮想住民」も多い。今回はこの取り組みのフィージビリティーと再現・拡張可能性について検討を行った。

2. 資料・情報および分析方法
現地でのヒアリングとディスカッション、現地資料の分析。WEB3.0 に関する資料、情報の収集と分析。

3.得られた知見
山古志の取り組みは「村・地域」という概念を変え、国境を越えて世界に広がる共同体を形成する可能性がある。単に「関係人口」というにとどまらない「村への参加・関与」の輪を広げていることに注目すべきである。また得られた知見としては、①町村合併で行政的な「山古志村」が存在していない「メリット」があること(既存の行政機構をバイパスすることによって柔軟な意思決定が可能)、②「コア」となるメッセージを発出する必要があること(山古志の場合には地震からの復興と伝統的な錦鯉産業)、③コンセンサス形成のための媒介者の存在が必要であること(テクノロジーについての住民とのコミュニケーション)、④地域間競争で勝ち抜くためのインパクトあるアクションが必要であること(メディア、SNS等の活用)、などが、このような仕組みを定着させるための条件として確認できた。この山古志の取り組みは応用可能性があるが、地域がどのようなメッセージを発出し、それが受け入れられるかどうかにかかっている。

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