講演情報

[1I01]下からの適応型平和構築:南スーダン・北部バーハル・エル・ガザルにおける市民の政府と生計に関する紛争の認識

*古川 光明1 (1. 獨協大学)

キーワード:

南スーダン、適応的平和構築、地域主体性、ガバナンス、国民対話

本稿は、南スーダン独立後の繰り返えされる内戦と外生的リベラル平和構築の限界を踏まえ、北バール・エル・ガザール州アウェイルでの住民認識を基に「下からの適応的平和構築」を検討する。2018年の世帯調査(644世帯、回答632)と2017年の北バール・エル・ガザール州で行われた国民対話調査報告書を併用し分析を行った。結果は政府への不満が強く(雇用創出、保健・教育、上下水道、電力などの低評価)、食糧不足や衛生・医療アクセスの脆弱性が深刻であること、伝統首長が地域生活で依然として大きな役割を果たしていることが明らかとなった。生計資産では土地・水が特に紛争要因と認識され、他民族や隣国との摩擦が顕著であった。国民対話からは、汚職・中央集権への不満や若者・女性・障害者の包摂要求が明らかとなった。今後の対応として、地域主体の参加・学習・適応を重視する平和構築、透明性と反汚職、公共サービス強化、経済多角化、世代・民族を超えた対話促進を政策的優先課題として提言するとともに、本稿の課題として他地域・多民族の比較や長期的評価の必要性を掲げた。

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン