講演情報

[1I04]インド、ラダックにおける連邦直轄領移行後の開発の現状

*林 加奈子1 (1. 桜美林大学)

キーワード:

ラダック、連邦直轄領、開発の現状

1.研究の背景およびリサーチクエスチョン   
 インド最北端のトランスヒマラヤに位置し、平均標高3500メートルのラダックは、「西チベット」とも呼ばれ、従来ジャム・カシミール州の一部であった。しかし、第二次モディ政権の下、2019年に突如としてラダック連邦直轄領となり、現在多額の開発予算が流れ込んでいる。本発表では、レー地区およびカルギル地区の一部における連邦直轄領後の開発の現状はいかなるものかをリサーチクエスチョンとして調査結果を報告する。

2.資料・情報および分析方法
 本研究は、ラダックおよびインドで出版されている文献資料、また2024年および2025年に現地調査で収集した情報をもとにしている。本発表では、現地調査で実施した住民およびラダックの現地NGO関係者への聞き取り、また村での参与観察の情報をもとに、定性的に分析を行う。

3.得られた知見  
 中心都市レーおよびカルギルではインフラを中心とする開発が急速に進んでいた。一方、カルギル地区に含まれるザンスカールと呼ばれるラダック最奥の地域においては現在大きな開発の影響は見られないものの、現在レー、カシミール、マナリ(ヒマチャルプラデシュ州)とつなげる道路の建設計画が進んでおり、この数年以内に大きな影響があると推測される。
 また、都市では開発の流れに乗っている者も見られるが、最奥の村々では人々はこれ以上の開発の進行をよく思っていない面も見えた。特に、伝統的な自給自足の経済、村内の人びとの関係性、仏教に基づいた生活の変化に不安を覚える声が聴かれた。  
 さらに、NGO関係者の聞き取りからは、行政とNGOの関係は良好であるということではあったが、それぞれが専門分野に特化した問題解決に取り組んでおり、今後のラダックの開発についてのビジョンが共有されていないこと、NGO間のネットワークや運動は脆弱であることが明らかになった。

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