講演情報

[1J07]持続可能な航空のための国際規範とグローバルガバナンス〜国連と国際民間航空機関における多国間外交

*勝間 靖1,2 (1. 早稲田大学、2. 国連大学)

キーワード:

持続可能な航空、国際民間航空機関、国際航空運送協会、持続可能な航空燃料、低炭素航空燃料

1. 研究の背景: 2015年、国連総会でSDGsが採択され、国連気候変動枠組条約の締約国会議でパリ協定が締結された。交通分野では、2016年以降、国連・持続可能な交通のための会議が開催されている。航空については、京都議定書発効以降、国際民間航空機関(ICAO)で議論が進められてきた。2010年のICAO総会で、カーボン・ニュートラル成長が合意され、新技術の導入、運行方式の改善、代替燃料の活用、経済的手法の検討など4つの対策が決議された。
2. 研究目的とリサーチクエスチョン: この10年間の持続可能な航空に関する国際規範とグローバルガバナンスを研究対象とする。とくに、2016年の市場メカニズムを活用した全世界的な排出削減制度(GMBM)導入の決議、2022年の国際航空での二酸化炭素排出ネット・ゼロ目標(2050年)や2023年の代替燃料による二酸化炭素排出5%削減目標(2030年)の設定に注目する。第1に、国連とICAOでの持続可能な航空へ向けた多国間外交が、どのような要因を背景として、いかに展開されたかを分析する。第2に、その結果、どのような国際規範が形成されたかをレビューし、産油国など加盟国間の意見の相違はいかに解決されたかを分析する。第3に、国際線を運航する航空会社で構成される国際航空運送協会(IATA)における民間での国際合意がいかに形成されたかを分析する。
3. 資料・情報および分析方法: 第1に、外交研究と国際法の視点から、国連やICAOで採択された文書など一次資料をレビューする。第2に、国際機構論とグローバルガバナンスの視点から、ICAOやIATAなどで実務を担当する職員と面談する。第3に、国際会議で参与観察し、政府や国際機構の参加者と意見交換する。
4. 得られた知見: 第1に、国連において国家元首や政府首脳が合意した国際規範に基づき、専門機関であるICAOでは加盟国の交通担当大臣により具体的な議論が進められた。対策のうち、持続可能な航空燃料(SAF)と低炭素航空燃料(LCAF)について、産油国からの異論への対応が必要であった。第3に、国家間の合意だけでは国内的実施は難しく、IATAでの民間による国際合意が必要だった。しかし、開発途上国の航空会社への国際協力が不可欠なことが顕在化した。

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン