講演情報
[1K12]バングラデシュにおける社会的連帯経済の実践の探索
― 初期的調査から見えてきたこと
*高須 直子1 (1. 駒沢女子大学)
キーワード:
社会的連帯経済、バングラデシュ、互酬性、貧困、民主的連帯
1. 研究の背景およびリサーチクエスチョン
互酬性(reciprocity)を重視することで対等で相互的な関係を構築し、コミュニティの中でニーズを満たす「社会的連帯経済」は、具体的には、協同組合、社会的企業、非営利団体、相互扶助組織といった組織や、マイクロファイナンス、フェアトレード、地域通貨といった活動が挙げられる。これらの組織や活動は恐らく全ての国に存在するが、社会的連帯経済という概念での南アジアでの先行研究は限られており、バングラデシュのものは皆無に近い(高須, 2025a)。マイクロファイナンスや社会的企業といった個別分野での研究は多数存在するが、社会的連帯経済という視点での研究は、GDP成長に頼らない貧困削減方法の模索や、社会的連帯経済の更なる理論構築への貢献として意義がある。本研究では、まずバングラデシュにはどのような社会的連帯経済的な活動があり、どのような特徴があるかを探る。
2. 資料・情報および分析方法
本研究の初期的調査として2025年8月8日から21日までバングラデシュを訪問しインタビューをした情報を利用する。分析枠組みは、経済人類学者カール・ポランニーの論考を基にした「市場を通じた交換」、「再分配」、「互酬性」の3つの経済原理と社会的連帯経済の理論構築を主導するジャン=ルイ・ラヴィルが提唱する「連帯」の4分類を用いる(高須, 2025a & 2025b; Laville, 2023)。
3. 得られた知見
5つの市民社会組織(女性障害者当事者団体であるB-SCAN、Bangladesh Resource Centre for Indigenous Knowledge(BARCIK)、Poverty Alleviation through Participatory Rural Initiatives(PAPRI)、Kumudini Welfare Trust、Solidaridad)は、それぞれ独自の連帯的な活動に従事している。組織によって「市場を通じた交換」、「再分配」、「互酬性」のいずれかを優先させている。また、これらの事例は、重田(2024)による、地域主義の小さな活動が「今後の世界のグローバリゼーション、気候変動の温暖化、少子化・高齢化・過疎化の変化の中で、どこまで柔軟に対応し持続可能な活動になり、代替社会をつくり上げていける」のかという問いへの答えも一定程度提示しているようで興味深い。
参考文献
重田康博、2024、「書評 真崎克彦・藍澤淑雄 編著『ポスト資本主義時代の地域主義 ―草の根の価値創造の実践』」、国際開発学会『国際開発研究』第33号、第2巻、173-178頁
高須直子、2025a、「研究ノート バングラデシュにおける社会的連帯経済 ―女性のエンパワーメントを探るための分析枠組み―」横浜国立大学国際戦略推進機構紀要『ときわの杜論叢』、第12号、7-26頁
高須直子、2025b、「社会的連帯経済における主要概念の再検討:ラヴィルの論考を中心とした言説から」、多摩大学グローバルスタディーズ学部紀要『Bulletin』第17号、97-115頁
互酬性(reciprocity)を重視することで対等で相互的な関係を構築し、コミュニティの中でニーズを満たす「社会的連帯経済」は、具体的には、協同組合、社会的企業、非営利団体、相互扶助組織といった組織や、マイクロファイナンス、フェアトレード、地域通貨といった活動が挙げられる。これらの組織や活動は恐らく全ての国に存在するが、社会的連帯経済という概念での南アジアでの先行研究は限られており、バングラデシュのものは皆無に近い(高須, 2025a)。マイクロファイナンスや社会的企業といった個別分野での研究は多数存在するが、社会的連帯経済という視点での研究は、GDP成長に頼らない貧困削減方法の模索や、社会的連帯経済の更なる理論構築への貢献として意義がある。本研究では、まずバングラデシュにはどのような社会的連帯経済的な活動があり、どのような特徴があるかを探る。
2. 資料・情報および分析方法
本研究の初期的調査として2025年8月8日から21日までバングラデシュを訪問しインタビューをした情報を利用する。分析枠組みは、経済人類学者カール・ポランニーの論考を基にした「市場を通じた交換」、「再分配」、「互酬性」の3つの経済原理と社会的連帯経済の理論構築を主導するジャン=ルイ・ラヴィルが提唱する「連帯」の4分類を用いる(高須, 2025a & 2025b; Laville, 2023)。
3. 得られた知見
5つの市民社会組織(女性障害者当事者団体であるB-SCAN、Bangladesh Resource Centre for Indigenous Knowledge(BARCIK)、Poverty Alleviation through Participatory Rural Initiatives(PAPRI)、Kumudini Welfare Trust、Solidaridad)は、それぞれ独自の連帯的な活動に従事している。組織によって「市場を通じた交換」、「再分配」、「互酬性」のいずれかを優先させている。また、これらの事例は、重田(2024)による、地域主義の小さな活動が「今後の世界のグローバリゼーション、気候変動の温暖化、少子化・高齢化・過疎化の変化の中で、どこまで柔軟に対応し持続可能な活動になり、代替社会をつくり上げていける」のかという問いへの答えも一定程度提示しているようで興味深い。
参考文献
重田康博、2024、「書評 真崎克彦・藍澤淑雄 編著『ポスト資本主義時代の地域主義 ―草の根の価値創造の実践』」、国際開発学会『国際開発研究』第33号、第2巻、173-178頁
高須直子、2025a、「研究ノート バングラデシュにおける社会的連帯経済 ―女性のエンパワーメントを探るための分析枠組み―」横浜国立大学国際戦略推進機構紀要『ときわの杜論叢』、第12号、7-26頁
高須直子、2025b、「社会的連帯経済における主要概念の再検討:ラヴィルの論考を中心とした言説から」、多摩大学グローバルスタディーズ学部紀要『Bulletin』第17号、97-115頁
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