講演情報

[1L11]ジェンダー研修と世帯内意思決定過程への女性の参加

*甲斐田 きよみ1 (1. 文京学院大学)

キーワード:

ジェンダー研修、世帯内意思決定、ジェンダーと開発

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは持続可能な開発目標(SDGs)の1つであり、女性の世帯内意思決定力は女性のエンパワーメントの指標である(Doss 2013)。開発協力では、女性の経済力向上が世帯内意思決定力向上に繋がると想定し、数多くの女性対象収入創出プロジェクトが実施されてきた。女性が収入を得て世帯ニーズを満たしたり、自分に自信を得たりという成果がある。また妻の経済力が向上すると、世帯内で衣食住や教育、医療費等の基本的ニーズが充足されると示した先行研究は多い(Thomas 1997、Quisumbing 2003、Doss 2021他)。一方、女性が経済力を向上させると、夫が世帯への経済的貢献を減らしたり、妻の経済活動を妨害したり、暴力を振るったりという事例もある(Silberschmidt 2001、Ragetlie and Luginaah 2023)。筆者の研究では、夫妻が世帯内資源の分配をめぐる話し合いを、ほとんど行わない事例も散見された(甲斐田 2020)。日常に、世帯内で資源分配について話し合う機会が少ない夫妻に対して、ジェンダー研修を実施し夫妻で話し合う機会を提供すると、どのような反応があるだろうか。
 本研究は、2025年2月にザンビアのルサカ州の農村、3月にネパールのパンチカール市の農村において夫妻を対象にジェンダー研修を実施し、得られた質的データを基にしている。ジェンダー研修での夫妻の発言、記述および筆者の観察によるデータを、夫妻のジェンダー認識、世帯への貢献認識、夫妻が話し合う意義の3つの視点で分析し、夫妻が話し合う機会を持つことが、世帯内意思決定に影響を与えるか考察することを目的としている。
 調査の結果、ザンビアでは夫が世帯により経済貢献すべきという意識が強かったが、実際には妻も夫と同様に経済貢献していることが確認できた。両者とも話し合う機会が不足していることを認め、収入の用途に無駄があることへの気づきがあった。ネパールでは妻の多くが、研修講師の質問への回答や記述する活動を夫に任せ、夫と話し合う姿勢が見られなかった。

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