講演情報

[1L12]「子連れフィールドワーク」とポジショナリティ:エクアドル社会とその女性たちに向き合う国際協力研究の現場から

*河内 久実子1 (1. 横浜国立大学)

キーワード:

フィールドワーク、ポジショナリティ、ジェンダー、リフレクシビティ、エクアドル

本発表では、報告者自身が子どもを伴ってフィールドに入った経験をもとに、「子連れの研究者」というポジショナリティ(立場性)がフィールド調査に与えた影響について考察する。自宅から遠く離れた海外や国内で調査を行う研究者の中には、欧米を中心に、パートナーや子どもを伴ってフィールドワークを行ってきた事例も見られる。しかし、そうした研究者の学術論文や著作において、パートナーや子どもの存在が調査にどのような影響を及ぼしたのかに関して具体的に言及されることは稀である。1980年代になると、特に女性研究者を中心に少数であるが、エスノグラフィの形成や構築において同行する家族の存在が研究に与える影響、さらにはフィールドワークという行為が自宅に残る家族の生活に及ぼす影響について、より詳細な分析と記述の必要性が提起されるようになった(Mari et.al., 2016)。2000年代後半以降、女性研究者のワークライフバランスが注目され (e.g., Armmeni 2004; 仲・久保川合 2014)、2010年代に入ると、「母親」「父親」「妻・夫」「家族」「子ども」といったキーワードを通して、家族を伴いフィールドへ出かけた女性研究者の経験や家族の存在が与える研究方法や成果に関する議論が増加した(e.g., 椎野・的場2016)。
 本報告者の調査地は南米エクアドルであり、これまで同地域におけるフィールドワークでは、アジア人で小柄な日本人(または学生)、女性、研究者というポジショナリティのもとで調査を行ってきた。しかし今回は、あえて自ら子連れという立場を明示し、母親であることを隠さずに調査を実施した。この新たなポジショナリティの開示は、フィールドとの関係構築に多面的な影響を及ぼしたと考えている。他方で、時間的制約や特定の調査地へ赴くことが難しいなどの制限も生じた。

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン