講演情報

[1M04]独立支援の成果と課題:東ティモール独立プロセスの事例研究

*坂根 宏治1 (1. 島根大学)

キーワード:

独立支援、ガバナンス、国家建設、民族自決権、東ティモール、平和構築、平和構築と開発のネクサス

1. 研究の背景およびリサーチクエスチョン
東ティモールは、2002年の独立前後から現在に至るまで、多大な援助を国連他の援助機関から受けてきたが、果たして独立後の開発は順調に進んできたのだろうか?
東ティモールにおけるこれまでの開発プロセスをレビューし、国家建設支援の成果と課題につき分析する。またこれを踏まえ、世界各地で発生している分離独立運動に関して、外部アクターの関与のあり方につき考察する。

2. 資料・情報および分析方法
世銀、IMF等の援助機関の分析データ、東ティモール政府発行の資料等を活用し、独立以降の開発状況を客観的に分析する。またその結果を基に、独立支援の成果と課題について、検証を行なう。

3. 得られた知見
東ティモールに対しては、これまで20年以上にわたり国際社会から多大な支援が実施されてきたが、東ティモールの社会経済状況は、独立後10年経過後あたりをピークとして、停滞ないし悪化の傾向にあり、東ティモール政府が自律的に国家運営を行なっているとは言いがたい状況にある。主な原因として、政府のガバナンスの能力が脆弱であり、なおかつ対外援助がガバナンス能力の強化に充分な成果を挙げていない点が指摘できる。
東ティモールが独立を勝ち得たのは、独立プロセスが、冷戦終結直後の1990年代に行なわれた点が指摘できる。当時は、国際社会全体で主要国家間の対立が少なく、民族自決権などの人権概念や人道主義を尊重するモメンタムが国際社会に存在した。一方、現在の国際社会は、このような状況ではない。今、様々な国、地域で分離独立運動が行なわれているが、東ティモールの独立プロセスを振り返ると、このような動きへの支援のあり方は、慎重に考える必要があろう。

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