講演情報

[1M07]ネパールにおけるコミュニティ森林管理の展開と課題について

*バタライ ビノド1 (1. 東京外国語大学)

キーワード:

コミュニティフォレスト、ネーパル、持続可能な森林管理、森林、農村開発

ネパールにおけるコミュニティ森林管理(Community Forestry)は、持続可能な森林資源の保全と農村開発を同時に実現するモデルとして国際的に高く評価されている。本発表では、ネパールにおけるコミュニティ森林管理の歴史的経緯、制度的枠組み、現状およびその社会経済的・環境的インパクトについて総合的に検討する。1993年の森林法改正により正式に導入されたコミュニティ森林プログラム(CFP)は、2023年時点で22,266の森林利用者グループ(CFUG)を形成し、国土の約15%に相当する230万ヘクタール以上の森林を地域住民が管理している。この取り組みは、森林被覆率を1990年代の29%から44.74%へと回復させるとともに、約290万世帯の貧困削減や生計向上に寄与してきた。また、女性の参加促進、生物多様性の保全、気候変動の緩和といった多様な効果も確認されている。一方で、利益配分の不平等、ガバナンスの脆弱性、気候変動への脆弱性など、複雑化する課題も顕在化している。今後、持続可能性を確保するためには、制度的ガバナンスの強化、社会的包摂の推進、気候適応戦略の統合が不可欠である。本研究は、ネパールの事例が示すように、地域主導型の森林管理が持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献しうる可能性について、政策的含意も含めて考察する。

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