講演情報

[1M08]共有林保全意識の社会経済的要因:エチオピアシダマ州の事例

*鬼木 俊次1、坂本 剛2、レゲセ ティベブ3、平田 昌弘4 (1. 国際農林水産業研究センター、2. 静岡県立大学、3. ハワサ大学、4. 帯広畜産大学)

キーワード:

自然資源管理、森林、農民、共同体、倫理

サブサハラ・アフリカには、村落によって保有され、共同利用される共有林が広く分布しているが、人為的要因による森林劣化が深刻な課題となっている。エチオピア高原においては、森林面積の約90%が共有林であり、農民は家畜飼料、家庭用燃料や薬の多くを共有林資源に依存している。しかし近年、共有林の過剰利用にともない、森林面積の縮小や森林からの水土流出が顕著となっている。一方で、一部の地域においては、地域住民が自ら利用の規則や罰則を制定し、監視を行うことにより、森林の持続的利用と保全が実現している。こうした農民がいかなる環境的認識に基づいて森林保全を実現しているのかについては、必ずしも明らかにされていない。本研究では、農民の共有林保全意識の社会・経済的要因を解明することを目的として、エチオピア南部シダマ州の7村において、ランダムサンプリングによる325名の農民のインタビュー調査を実施した。特に、農民が森林に付与する環境的価値ならびに規範違反に対する処罰意識に着目した。調査の結果、多くの農民が森林保全の理由として気温低減効果や大気浄化機能を挙げており、これらの認識は、農業普及員の研修活動を通じて獲得されたものであることが明らかとなった。元をたどれば州政府の普及活動が農民の森林保全意識形成に大きな影響を及ぼしていることを示唆している。普及活動の影響は地域により差異があるものの、農民の共有林利用に関する規範形成に一定の役割を果たしていると考えられる。さらに、灌漑の有無、都市への近接性、農業研修の受講頻度が人々の森林保全意識と有意に関連しており、保全意識が社会経済的条件に内生的に規定されていることが示された。以上の結果は、地域住民の意識形成を適切な政策的誘導によって支援することの重要性を強調するものである。

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