講演情報
[1M12]シリア政変後の難民教育の現状と課題-ヨルダン教員へのアンケート調査から
*小松 太郎1、*宮内 繭子2、池之谷 理恵2 (1. 上智大学、2. ワールドビジョン・ジャパン)
キーワード:
難民教育、シリア、ヨルダン
本研究は、2024年末のシリア情勢変化後にヨルダンで実施したアンケート調査をもとに、教員が捉える難民教育の現状と課題を明らかにすることを目的とする。アンケートは、2025年4月末から5月初めにかけてオンラインで実施した。対象者は、国際NGO「ワールドビジョン・ジャパン」がシリア国境に近いイルビッド県で展開している教育事業に関わっているヨルダン人教員であり(初・中等学校で通常授業もしくは補習授業を担当)。アンケート回答者(114名)は、教員経験が10年以上の女性教員が多く(87%が女性、42%が11年以上の経験)、22%がシリア児童に対する直接的な指導経験を有している。直接的な指導経験がある教員の多くは、その経験が自身のシリア難民への態度に影響したと答えていた。具体的には、彼らへのより強い共感や関心、学びの支援への意欲が高まっていた。教育の在り方については、ヨルダン人とシリア人を「分けて教えるべき」とする意見が39%(「同意」21%、「強く同意」18%)に達した一方、「分けるべきでない」との意見も61%を占め、統合教育が教員に広く支持されていることが示された。また、シリアの政変後、児童が帰還を語る場面が「よくある」とする回答が63%を占め、学校現場における子ども達の揺れ動く心理的影響がうかがえる。教育提供の適切性については、「適切である」との回答が80%に達し、難民の教育権保障が一定程度肯定的に評価されていることが分かった。以上の結果は、シリア政変後の難民教育の現状に加え、教育現場の難民統合と帰還意識の狭間で教員が直面する課題と可能性を明らかにするものであり、今後の教育政策や国際支援のあり方に示唆を与える。
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