講演情報

[2L-07]着継がれた下衣を読む滋賀県湖東山間部の衣生活資料から

〇横田 尚美1 (1. 滋賀県立大)
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キーワード:

衣生活、仕事着、針仕事

〔目的〕2018年に、滋賀県湖東地域の山村の一軒の家から見つかった、200点ほどの衣生活資料を、翌年から調査している(科研費課題番号 20K13803)。
 仕事着の先行研究として、野上彰子「着継がれた上衣をよむ」(国立歴史民俗博物館『布のちから 布のわざ』1998年)がある。この中で野上は、実測図作成と復元、継布の調査、測色、染料の調査を行っている。
 本発表ではこの先行研究にならい、股引などを例に調査を行い、資料が見つかった家の仕事と着用者、継をあてた女性の針仕事について研究する。
〔方法〕野上は、何重にも当てられた継布を一枚ずつバーチャルに剝いで行くという復元作業を行い、この服の家の針仕事に関する美意識や生業などを考察した。この方法を本研究でも取り入れる。野上の研究は、出自のわからない衣類がどのような家のどのような人によって着られていたのかを割り出そうというものだった、しかし、本資料では所有者の家の元々の生業や家族構成が確認できている。聞き取り調査によって、継が多くあてられた服は山仕事用だということもわかっている。野上の復元の手法と、所有者の家の情報から、本史料を読み解く。
〔結果〕股引では圧倒的に膝に継が当てられていた。何重にも継をあてているのに膝や腰が伸びて膨らんでいる。腰紐が切れているものもある。これらからハードな仕事に用いられていたことがわかる。規則的な継ぎあてと刺子から、この家の女性の美意識がわかる。