講演情報

[3I-02]様々な置換度で分子鎖間を架橋した再生セルロース繊維の水による膨潤挙動

〇奥川 あかり1、山根 千弘2、湯口 宜明1 (1. 大阪電通大、2. 神戸女大)
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キーワード:

再生繊維、洗濯、親水性、架橋、膨潤挙動、小角X線散乱

目的 再生繊維は生分解性のエコ・マテリアルであるが,水の影響を受けやすく,家庭で洗濯すると著しいしわや膨潤収縮が発生する.これらを解決するには再生セルロースの親水性を制御する必要がある.これまでにセルロースの膨潤挙動を分子運動と関連付けて小角X線散乱で検討し,架橋によって水の影響が抑制されることを報告した.本研究では様々な置換度で分子間架橋した再生繊維の水による膨潤挙動を小角X線散乱によって詳細に検討した.
方法 再生繊維(リヨセル)をセルロースの一般的な架橋剤であるジメチロールジヒドロキシエチレン尿素で架橋した。各水分率に調整した架橋繊維をガラスキャピラリーに密閉後,繊維軸に垂直に高輝度放射光からのX線を入射し,観測された小角X線散乱プロファイルのピークやショルダーの位置から長周期を評価した.
結果 架橋した再生繊維の小角X線散乱像を観察すると架橋の有無に関わらず異方的な散乱が出現し,繊維に対して赤道方向の散乱強度は乾燥状態では単調に減少したが,湿潤によって増加した.この散乱強度を赤道方向にスキャンするとピークやショルダーが出現し,この位置はミクロフィブリルの存在周期を表す.ここでの長周期は水分率の増加に応じて拡大したが,架橋すると置換度の増加に伴って短くなった.これは水がミクロフィブリルの間隙の非晶に浸入し,間隙を押し広げて膨潤したことを示唆し,分子鎖間の水酸基が架橋されて膨潤が抑制されたと考えられる.