講演情報
[3N-5]長期家計簿からみた生活史と生活設計(第4報)高齢期への移行期と高齢期の家計の実態
〇中川 英子1、重川 純子2 (1. 宇都宮短大、2. 埼玉大)
キーワード:
長期家計簿、家計、生活設計、高齢期、資産
目的 老後の生活費は生活上の不安として強く意識されている。本報告では、52年間にわたる長期家計簿を資料に、高齢期への移行期と高齢期の家計実態を明らかにする。方法 夫が54歳で定年退職後2回目の再就職を始めた2001年から2018年までのA家家計記録を資料に、収入の変化、消費内容の分析および家計管理者の妻へインタビューから分析した。結果 A家の夫は54歳で退職後再就職した時期の収入は、退職前の時期の9割以上を維持していた。2度目に再就職した時期の収入は同時期の約3割減少、年金生活は約5割弱減となったが、妻が常勤職に就いたことで、世帯収入は夫の退職前時期の約3割増となった。2004年には退職金と借入により二女用、2010年には妻の仕事用にマンションを購入、2016年以降は月々賃貸収入を確保している。高齢期に平均消費性向が100%を超えたのは、住宅のリフォーム費用が発生した年のみである。A家計では夫58歳までに3人の子の教育期間が終了し、年金生活前までに結婚(他出)、夫の収入の下がる時期に経常的な消費が縮減する環境になっている。その他、保健医療費は夫婦が比較的健康であったことにより1.4%と低く、交際費を含むその他の消費支出は、他出家族の移転支出等により34.8%と高めになっている。A家では妻の短期・長期の生活設計の下、妻の就職や子の教育期間と夫定年時期、夫婦が健康であったことなどが本家計運営には幸いした。