講演情報
[P-080]第二次世界大戦以降の着物文化―女子大生と謝恩会-
〇山村 明子1 (1. 東京家政学院大)
キーワード:
女子大生、振り袖、着物
【目的】戦後の若い女性の晴れ着としての着物の展開について、1960年代の女子の大学・短期大学進学率の上昇以降の女子大生と卒業記念パーティーまたは謝恩会と呼ばれる場の風俗に着目する。60・70年代の女子大生と晴れ着の関係性についてたどり、着物文化が変容していく様を明らかにする。【方法】1960年代以降の女子大生とその装いにまつわる言説を文献資料から分析する。社会情勢をたどる資料として朝日新聞および読売新聞の記事を、大学等の謝恩会の情報については学校誌・卒業アルバム等を、着物産業の動向をたどる資料として業界誌「そめとおり」(染織新報社)等を使用する。 【結果】1950年前後に起きた「復古調」ブームが、着物を晴れ着として着用することを広めたことは既発表「第二次世界大戦以降の着物文化-成人式と振袖-」(2021)で指摘した。1962年暉峻康隆(早稲田大学教授)が、『婦人公論』に「女子学生世にはばかる」を発表したことに端を発する女子大生亡国論に代表されるように、女子大生の存在は社会に注目をされた。60年代前半には新聞では派手に着飾る謝恩会の服装について取り上げる記事が登場し、その一方で、謝恩会での着物の着用を禁止、制限をする傾向も登場する。この時期の女子大生の謝恩会に着用する着物は1.訪問着ブーム、2.中振袖ブームを生み出す要因の一つとなっていたと考え、着物の晴れ着文化の形成について知見を得た。