講演情報

[2D-02]博物館における染織文化財の展示方法の調査と検討 (第2報)

*濱田 仁美1、古山 千夏1、沢尾 絵1 (1. 東京家政大学)

キーワード:

磁石、染織品、展示方法、博物館、文化財

目的 博物館における染織文化財の展示方法として近年磁石が使用される機会が多くなってきた。しかし、磁石貼付が染織品に対し及ぼす影響を科学的に分析した先行研究は見当たらない。そこで本研究では、磁石や針を用いた展示方法が染織品に及ぼす影響を科学的に分析し、より良い展示方法を提案することを目的とした。
方法 大学博物館及び美術館4館を対象とし、染織品の展示方法について聞き取り調査を行った。また、磁石貼付や針の使用の影響を検証するために、異なる繊維からなる試料布(絹布、苧麻布、レーヨン布)、布構造と強度の異なる絹布を用いて、磁石貼付及び針の突き刺し実験を行い、布構造と物性の変化を測定した。
結果 聞き取り調査より、染織品の展示に磁石は約10年前から導入されているが、磁石の使用に際して明確な方法や基準はなく、各館の方針や学芸員の経験値による判断で使用されていることが分かった。針の突き刺し実験では、糸密度の高い布は針が糸を破断して損傷が大きかった。磁石貼付実験では、柔らかい繊維である絹布やレーヨン布は、磁石貼付により布は潰れて回復しなかった。磁石貼付による布の潰れやすさは、布の強度には依存せず、圧縮特性に依存する可能性が見いだされた。磁石を用いた展示の方が染織品に破断などの損傷を与えない可能性が高いが、磁石貼付によって布の潰れは生じるため、同じ染織品への繰り返しや長期の磁石使用には注意が必要である。