講演情報
[P-061]ムラサキの根を使用した紫根染の染色温度と染色結果について
*青木 正明1 (1. 京都光華女子大学短期大学部)
キーワード:
ムラサキ、紫根染、草木染、古代染色
【目的】
古来紫色を染めるムラサキを使った正確な染色手法は現代に受け継がれていないが、経験的な工芸染色手法および先行研究では高温で抽出・染色をすると色が濁るため色素が高温に弱く変質すると想定されており、60℃前後で染色作業をすることが推奨されている。しかしムラサキを使用した江戸後期草案の紫雲膏生成の際は100℃を超える加温環境にも関わらず当該軟膏が赤紫を呈していることから、加温による色素挙動を確かめるための検証を行った。
【方法】
国産ムラサキを1-プロパノール抽出、及び水抽出を行い、ミョウバンによる先媒染した絹布を、それぞれ低温(60~65℃)、及び高温(85℃~90℃)の温度環境下で染色し、分光測色にてL*a*b*値及び可視光波長毎のK/S値を求めた。
【結果】
プロパノール抽出、水抽出とも高温染色のほうがC*値が減少しa*/b*値が減少し、高温染色によって彩度が減少し青みの紫に移行した。しかしK/S値については、プロパノール抽出では吸収波長の2つの山(550nm付近及び600nm付近)について高温染色のほうが吸収量が減少したにもかかわらず水抽出では吸収波長の2つの山とも吸収量が増加した。また、プロパノール抽出及び水抽出とも短波長側及び長波長側の吸収量は高温染色で増加した。これにより紫を呈する主色素が単に高温で変質していない可能性があり、更なる検証が必要であることが示唆された。
古来紫色を染めるムラサキを使った正確な染色手法は現代に受け継がれていないが、経験的な工芸染色手法および先行研究では高温で抽出・染色をすると色が濁るため色素が高温に弱く変質すると想定されており、60℃前後で染色作業をすることが推奨されている。しかしムラサキを使用した江戸後期草案の紫雲膏生成の際は100℃を超える加温環境にも関わらず当該軟膏が赤紫を呈していることから、加温による色素挙動を確かめるための検証を行った。
【方法】
国産ムラサキを1-プロパノール抽出、及び水抽出を行い、ミョウバンによる先媒染した絹布を、それぞれ低温(60~65℃)、及び高温(85℃~90℃)の温度環境下で染色し、分光測色にてL*a*b*値及び可視光波長毎のK/S値を求めた。
【結果】
プロパノール抽出、水抽出とも高温染色のほうがC*値が減少しa*/b*値が減少し、高温染色によって彩度が減少し青みの紫に移行した。しかしK/S値については、プロパノール抽出では吸収波長の2つの山(550nm付近及び600nm付近)について高温染色のほうが吸収量が減少したにもかかわらず水抽出では吸収波長の2つの山とも吸収量が増加した。また、プロパノール抽出及び水抽出とも短波長側及び長波長側の吸収量は高温染色で増加した。これにより紫を呈する主色素が単に高温で変質していない可能性があり、更なる検証が必要であることが示唆された。