講演情報
[P-079]着物文化のファッション化毛皮の使用を事例として
*山村 明子1 (1. 東京家政学院大)
キーワード:
着物、毛皮、昭和
目的:今日の着物文化は、時代に応じて変化を遂げながらつくりだされてきた。特に第二次世界大戦終戦以降の現代社会では、着物の着用場面は晴着または非日常着としての役割が大きくなる中で、着物が伝統的服飾のカテゴリーから逸脱しファッション化することが、着物文化を存続させる遠因になることについて考察する。方法:主な一次史料として、戦前の『婦人画報』、戦後の『美しいキモノ』(共に婦人画報社)などを取り上げる。結果:近代日本における毛皮着用に関する先行研究(田辺,2009)では、近世までの不浄のものとみなされていた毛皮を衣料に採用するように転換したことが指摘されている。毛皮を採用することによる着物文化のファッション化は、戦前と戦後の2回のタイミングが確認される。第一段階は大正末から昭和初期における、欧米の毛皮ブームの流入であり、「世界的流行」(婦人画報,1930)の狐の襟巻は着物の装いにも新しいイメージを添加した。第二段階は1960年前後に若い女性の晴着に採用された白いショールの流行である。ただし、これは毛皮に限らず、アクリル製で毛足の長いシール風に織り上げたものが商品名としてミンクと名付けられ流通したことも少なからず影響している。この装いは正月、成人式の若い女性の晴着の定番の装いとなる。欧米文化を採用し吸収する中で、現代的な和装文化が定型化されており、流行と定着による新陳代謝が、着物文化を存続させているといえる。