講演情報

[3G-05]樹脂架橋したセルロースの小角Ⅹ線散乱により解析したミクロフィブリルの間隔

*奥川 あかり1、山根 千弘1、湯口 宜明2 (1. 神戸女大、2. 大阪電通大)

キーワード:

セルロース、麻、洗濯、親水性、小角Ⅹ線散乱

目的 石油系材料に代わる生分解性材料の開発が期待されている.その候補には綿や麻などと同じセルロースで構成される再生セルロースがあるが,その高すぎる親水性が課題である.一方,天然セルロースも水の影響を受ける.そこで本研究では樹脂架橋した天然セルロースのミクロフィブリル(微結晶)の間隔の変化を明らかにし,セルロース系繊維の親水性制御の可能性を検討した.
方法 天然セルロース繊維(麻)を汎用的なジメチロールジヒドロキシエチレン尿素で架橋した.これらを標準状態(室温湿度下)と湿潤状態に調整し,ガラスキャピラリーに封入後,繊維の赤道線方向の小角X線散乱像を測定し,回折ピークやショルダーの位置から長周期(微結晶間隔)を評価した.
結果 架橋した麻の二次元小角X線散乱像を観察すると繊維の赤道線方向に回折ピークやショルダーが現れた.標準状態の長周期を見積もると架橋度合いに応じて増加し,微結晶間隔が広がることがわかった.これは樹脂溶液中で膨潤した繊維内部のセルロース分子間に樹脂が侵入し,キュアリングによって固定されたことから架橋度合いに応じて間隔が広がったと考えられる.未架橋の繊維の長周期は湿潤によって標準状態の2倍程度まで増加したが,架橋度合いに応じて倍率は減少した.すなわち,架橋によって水分子が浸入できるスペースが減ることで微結晶間隔の拡大が抑制され,洗濯時には水の影響を受けにくくなることが科学的に明らかになった.