講演情報

[生涯スポーツ-SA-1]子どもの運動を支える「親子の三間」家庭と地域の実態とその展望

*香村 恵介1 (1. 名城大学)
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<演者略歴>
2008年に岐阜県スポーツ科学トレーニングセンターで測定業務専門職員、2014年より京都文教短期大学で幼児教育に携わる。2015年、同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科を修了(博士:スポーツ健康科学)。2018年に静岡産業大学講師を経て、2020年より名城大学農学部および大学院総合学術研究科にて准教授を務めている。
子どもの身体活動をめぐる環境は、この20年で大きく変化している。かつては放課後や休日に友達と自由に遊ぶ姿が一般的だったが、現在は幼児の約半数が平日に園外で外遊びをまったく行っておらず、小学生でも高学年女子を中心に外遊びをしない子どもが3〜4割を占めている。一方で、習い事の参加率は上昇しており、2019年時点で小学生の約8割が何らかの習い事を行っている。自由に遊ぶ時間は減り、費用をかけて運動機会を得る構造が広がっている。筆者が関わった笹川スポーツ財団の調査では、世帯年収が低いほど運動系の習い事をしていない幼児の割合が高く、年長児では高所得層と低所得層の間に40ポイントを超える差が確認された。運動習慣の獲得が家庭の経済状況に左右される実態が明らかになっている。
 このような子どもの現状の背景には、「親子の三間」(時間・空間・仲間)のあり方が関係している。同調査では、親子で体を動かす頻度が高い家庭ほど幼児の運動時間が長く、「親子でまったく体を動かさない」家庭に比べ、「ほとんど毎日」遊ぶ家庭では週あたり7.5時間の差があった。また、両親とも週1回以上運動している家庭では、そうでない家庭よりも運動時間が約1.2時間長い。さらに、保護者同士のつながりがある家庭の子どもほど、運動時間が長い傾向も示されている。
 本発表では、こうした調査結果をもとに、子どもの運動習慣を支えるために必要な視点として、①保護者の時間確保と意識啓発、②家族で一緒に、または自宅でも体を動かせる環境の整備、③地域コミュニティや仲間づくりの支援、という三つの柱を提案する。それぞれの柱に対応する実践として、大学での学生向け授業プログラム、親子で参加できるスポーツ環境や動画を活用したアクティブなスクリーンタイム、公民館を活用した親子や異年齢の運動遊びによる交流機会などを紹介し、「親子の三間」を支える取り組みの方向性を考察する。

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