講演情報
[健康福祉-SA-2]糸島幸福長寿研究の実践事例・研究成果
*岸本 裕歩1 (1. 九州大学)
<演者略歴>
2017年より九州大学・准教授として勤務、福岡県糸島市の市民や九州大学の学生を対象とした疫学研究の主任研究者を務める。地域のフレイル予防と産官学民連携による健康づくりを推進している。大学内外で複数の専門職・委員も兼任。
2017年より九州大学・准教授として勤務、福岡県糸島市の市民や九州大学の学生を対象とした疫学研究の主任研究者を務める。地域のフレイル予防と産官学民連携による健康づくりを推進している。大学内外で複数の専門職・委員も兼任。
フレイル予防をめぐる体育・スポーツの多面的な役割を議論する中で、演者は地域に根ざした研究の一例として「糸島幸福長寿研究」の取り組みを紹介する。高齢者が継続的に関わる運動支援をどのように設計し、社会的・心理的・身体的側面をどう捉えるべきか。本シンポジウムでは2つの研究成果を中心に考えたい。
1つ目は、遠隔通信を活用した運動教室の試みである。週1回60分、筋力トレーニングが主体のプログラムを、対面指導群と遠隔指導群に分けて3ヶ月間実施し、身体的フレイルの割合の変化を比較した。その結果、両群に違いはなかったが、終了後に遠隔指導の継続を希望した参加者はいなかった。音声や映像の不具合、視聴覚的負担の理由は想定していたが、「寂しかった」といった交流欠如も主な理由に挙がった。運動の場が身体のためだけでなく、他者と共に過ごす社会的・心理的空間であることを参加者の声から再認識した。
2つ目は、ウォーキングと身体的フレイルとの関連をみた横断研究である。地域在住高齢者846名を対象に、ウォーキング習慣の有無と他の運動の実施状況から4群に分類し比較した結果、ウォーキング習慣のみある群の身体的フレイルの割合は、運動習慣がない群と変わらなかった。一方、ウォーキングに加え他に運動している群や、他の運動を継続している群では身体的フレイルの割合が有意に低く、多様な運動の組み合わせがフレイル予防に有効であることが示された。また、「運動習慣」「社会参加」「活動量基準」を軸に8群で検証したところ、2項目以上に該当する人々で身体的フレイルの割合が低かった。
これらの知見は、単一の運動介入や手法では不十分であり、量・質・つながりからなる“身体活動のデザイン”が求められることを示唆している。今回は、データのみならず、参加者の意見も交えながら、身体的・心理的・社会的な視点で高齢期の「運動・スポーツのある暮らし」を考えるきっかけとしたい。
1つ目は、遠隔通信を活用した運動教室の試みである。週1回60分、筋力トレーニングが主体のプログラムを、対面指導群と遠隔指導群に分けて3ヶ月間実施し、身体的フレイルの割合の変化を比較した。その結果、両群に違いはなかったが、終了後に遠隔指導の継続を希望した参加者はいなかった。音声や映像の不具合、視聴覚的負担の理由は想定していたが、「寂しかった」といった交流欠如も主な理由に挙がった。運動の場が身体のためだけでなく、他者と共に過ごす社会的・心理的空間であることを参加者の声から再認識した。
2つ目は、ウォーキングと身体的フレイルとの関連をみた横断研究である。地域在住高齢者846名を対象に、ウォーキング習慣の有無と他の運動の実施状況から4群に分類し比較した結果、ウォーキング習慣のみある群の身体的フレイルの割合は、運動習慣がない群と変わらなかった。一方、ウォーキングに加え他に運動している群や、他の運動を継続している群では身体的フレイルの割合が有意に低く、多様な運動の組み合わせがフレイル予防に有効であることが示された。また、「運動習慣」「社会参加」「活動量基準」を軸に8群で検証したところ、2項目以上に該当する人々で身体的フレイルの割合が低かった。
これらの知見は、単一の運動介入や手法では不十分であり、量・質・つながりからなる“身体活動のデザイン”が求められることを示唆している。今回は、データのみならず、参加者の意見も交えながら、身体的・心理的・社会的な視点で高齢期の「運動・スポーツのある暮らし」を考えるきっかけとしたい。
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