講演情報

[スポーツ文化-SA-2]スポーツは地域のセーフティネットとなり得るかアフリカの草の根クラブとの協働事例から考える

*岸 卓巨1 (1. 一般社団法人A-Goal)
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<演者略歴>
2011年よりJICA海外協力隊としてケニアの児童保護拘置所で活動。その後、Tokyo2020レガシー事業「Sport for Tomorrow」のコンソーシアム事務局での勤務や、大学院にてアフリカにおけるスポーツを通じた開発の実態について研究を行う。現在は(公財)日本アンチ・ドーピング機構に勤務する傍ら、一般社団法人A-GOALの代表として、ケニア・マラウイ・日本を主な拠点として、スポーツを通した社会課題解決の取り組みを行っている。
本発表では、「平和」を、人々が互いの尊厳を認め合いながら共に生きることができる状態と定義し、スポーツが地域社会におけるセーフティネットとしてどのように機能し得るのか、アフリカでの事例を通して検討する。
ケニアでは、貧富の差が大きく、貧困層の人々は公的支援を得ることが困難な状態にある。そこでは、日々の生活を維持するために人と人とのつながりが、「ライフライン」として機能している。 こうした地域において、多くの草の根のサッカークラブが、スポーツの場にとどまらず、ストリートチルドレンの保護、コミュニティスクールの運営といった多様な地域活動を行っている。サッカークラブの運営者が、そうした活動に取り組む背景には、様々な社会的要因があり、地域活動を通じた人とのつながりが、自らの暮らしを支える基盤となっている現実がある。
 発表では、これまでの「スポーツを通した開発」の研究において、十分に取り上げてこなかったスポーツの実相をより具体的に理解する手がかりとして、A-GOALの取り組みを紹介する。A-GOALでは、ナイロビのキベラスラムにおいて、複数の既存クラブや指導者とともにユースサッカーリーグを、年間を通して運営し、コミュニティの力を高めている。そこでは、政府系のプロジェクトなどで取られがちな「支援者と裨益者」といった2項対立的な構図ではなく、現地住民が主体となり、地域内での助け合いを日本や遠隔地から伴走的に支えるという関係性が築かれている。もともと、地域に根ざした活動を行い、人々のつながりを育み出している草の根のスポーツクラブとNGOが連携するからこそ、現地のニーズに根ざした活動や持続可能性の担保、その時々の社会情勢(物価変動・災害等)に合わせた臨機応変な対応を可能にしている。
 本発表では、スポーツがいかにして地域のセーフティネットとなり得るのか考察するとともに、地域や立場を超えて広がる協働のかたちを考える機会としたい。

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