講演情報
[スポーツ文化-A-04]なぜタイリーグへの移籍と永住を決意したのか?(社)日本人元プロサッカー選手を事例に
*野田頭 尚1、上杉 杏2、青山 将己3 (1. カセサート大学、2. 吉備国際大学、3. 流通科学大学)
グローバル化の進展に伴い、アスリートの国境を越えた移動はキャリア形成上、重要な要素となっている。特に、エリートアスリートの地理的流動性は、国際的スポーツ産業において価値ある資産と見なされ、競技キャリアの発展のみならず、異文化への適応力も求められる。異国でキャリアを構築するアスリートにとって、引退後にホスト国で新たな職業選択を行うことは重大な課題であり、制度的支援の不足や文化的障壁の存在が指摘されてきた。これまでの研究において、アスリートのキャリア発達や引退後の適応に関する知見は蓄積されているものの、ホスト国における移民アスリートのキャリア移行に関する研究は限定的である。本研究は、タイにおいてプロサッカー選手として活動し、引退後に現地で農業に従事している元アスリートを事例とし、移民アスリートにおけるキャリア移行およびその意味づけを明らかにすることを目的とする。質的ライフヒストリー研究のアプローチを採用し、ナラティブ・インタビューおよびリフレクシブ・ライフライン法を用いてデータ収集を行った。データ収集は2回の半構造化インタビューで構成され、1回目は幼少期から現在に至る人生経験、教育歴、スポーツキャリア、引退後の職業選択、文化的適応に関する自由叙述を促した。インタビュー中に語られた主要なライフイベントは研究者によって時系列で整理され、2回目のインタビューではそのライフラインを視覚資料として提示し、参加者とともに内容の検討・修正を行いながら、人生の転機に関する内省を促進した。参加者は各転機の意味づけおよび感情的影響(0~10段階)を示し、人生軌跡に対する認識を再構築した。本発表では、移民アスリートのキャリア移行およびその意味づけの分析を通じ、国際的競技経験が引退後のキャリア選択にいかなる影響を与えるのかを明らかにし、ホスト国におけるアスリートのキャリア形成に関する理解の深化を図る。
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