講演情報
[スポーツ文化-SB-1]運動部活動がスポーツ文化に及ぼした影響教育言説からのアプローチ
*神谷 拓1 (1. 関西大学)
<演者略歴>
筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。博士(教育学)。岐阜経済大学(現在、岐阜協立大学)、宮城教育大学を経て現職。日本部活動学会会長、日本体育科教育学会理事。
筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。博士(教育学)。岐阜経済大学(現在、岐阜協立大学)、宮城教育大学を経て現職。日本部活動学会会長、日本体育科教育学会理事。
本報告では、運動部活動がスポーツ文化に及ぼした影響を教育言説の観点から読み解いていく。これまで学校でスポーツ活動に取り組む際に、その教育的意義が「体力づくり」「競争」「道徳」に見出されてきた。これらは学習指導要領の目標として、そして、内申書・調査書の評価項目として位置づけられてきたことによって教育現場に影響を及ぼしてきた。また、学校の対外試合の方針を定めた対外試合基準も、「体力づくり」「競争」「道徳」を理由に緩和され続け、各時代の教育政策を具現化する役割を果たしてきた。
しかし、これらの教育言説は、学校に部活動を位置づける論理として脆弱であった。実際に1969年以降、さらには、1998年以降に部活動の地域移行が進められたが、「体力づくり」「競争」「道徳」は学校でなくても取り組める教育内容でもあり、これらの言説は学校に部活動を位置づける根拠にならなかった。その問題は2008年以降の学習指導要領でも続いており、「総則」で示された部活動の方針に貫かれている原理は、依然として「体力づくり」「競争」「道徳」である。そのため、現在も学習指導要領の方針から部活動を捉える限り、学校に位置づける根拠を見出すことはできないのである。
そのような問題をふまえ、修正を図ろうとする対抗言説もあった。戦後初期の学習指導要領で提唱された「レクリエーション」言説であり、また、その言説を教師の専門性との関連で理論化しようとした宮坂哲文、城丸章夫、中村敏雄といった民間在野の研究者たちの主張である。しかし、それらの理論を推進する役割を果たすことが期待された教職員組合には、部活動よりも教師の労働環境の改善を重視する人も多く、この言説は一部の実践家に継承されるに止まり、3つの教育言説を批判・是正する勢力にはならなかった。今後のスポーツ文化の在り方を展望するうえでも、このような教育言説の歴史をふまえた議論が求められる。
しかし、これらの教育言説は、学校に部活動を位置づける論理として脆弱であった。実際に1969年以降、さらには、1998年以降に部活動の地域移行が進められたが、「体力づくり」「競争」「道徳」は学校でなくても取り組める教育内容でもあり、これらの言説は学校に部活動を位置づける根拠にならなかった。その問題は2008年以降の学習指導要領でも続いており、「総則」で示された部活動の方針に貫かれている原理は、依然として「体力づくり」「競争」「道徳」である。そのため、現在も学習指導要領の方針から部活動を捉える限り、学校に位置づける根拠を見出すことはできないのである。
そのような問題をふまえ、修正を図ろうとする対抗言説もあった。戦後初期の学習指導要領で提唱された「レクリエーション」言説であり、また、その言説を教師の専門性との関連で理論化しようとした宮坂哲文、城丸章夫、中村敏雄といった民間在野の研究者たちの主張である。しかし、それらの理論を推進する役割を果たすことが期待された教職員組合には、部活動よりも教師の労働環境の改善を重視する人も多く、この言説は一部の実践家に継承されるに止まり、3つの教育言説を批判・是正する勢力にはならなかった。今後のスポーツ文化の在り方を展望するうえでも、このような教育言説の歴史をふまえた議論が求められる。
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