講演情報
[14介-口-08]高齢者における自覚的な発声評価と身体的・心理的健康状態との縦断的研究かさまスタディによる2年間の追跡研究
*西村 生1、角田 憲治1、大藏 倫博1 (1. 筑波大学)
【背景】加齢により音声の問題は増加し、その生涯有病率は3割に達する。音声問題の一種である発声障害と抑うつとの関連は複数報告され、一部の横断研究では、同障害と身体活動制限の関連性を認めている。だが、これらの関連性を検証した研究は乏しく、効果的な支援策の構築のため、追跡研究に基づく知見の蓄積が求められる。そこで本研究では、2年間の追跡研究により高齢者の発声評価と身体的・心理的状態との関連性を検証した。【方法】2022年に実施された体力測定会の参加者252名のうちデータ欠損がなく、2023年と2024年の追跡調査に1回以上参加した172名を対象とした(76.4±5.3歳、女性103人)。自覚的発声評価にVoice Handicap Index 10(VHI-10)を用いた。先行研究を参考に、VHI-10が0点を「発声障害なし」(PVHなし)群、1点~4点を「軽微な発声障害あり」(軽微PVH)群、5点以上を「発声障害あり」(PVH)群とした。身体機能評価に握力、開眼片足立ちテスト、椅子立ち上がりテスト、5m通常歩行時間、長座体前屈を用いた。心理的健康はGDS、身体活動量はPASEにより評価した。統計解析には線形混合モデルを用い、従属変数に身体的・心理的指標、説明変数に自覚的発声評価を投入し、各種共変量で調整した。【結果】2年間の追跡調査の結果、交互作用が認められた項目はなかったが、長座体前屈と5m通常歩行時間に群および時間の固定効果が認められた。全体として加齢に伴い両パフォーマンスは低下するが、追跡期間を通して軽微PVH群やPVH群は、PVHなし群に比べて低値を示した。また、GDSでも群の固定効果が認められ、追跡期間を通してPVH群は他の群と比較して抑うつ度が高かった。【結論】追跡期間を通して自覚的発声障害がある高齢者は、柔軟性および歩行能力が低く、抑うつ度が高いことがわかった。
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン
