講演情報
[03心-ポ-31]個人の気質と熟考との関連に対する認知的柔軟性の媒介効果
*髙橋 由衣1、高井 秀明2 (1. 日本体育大学大学院、2. 日本体育大学)
ポジティブ思考が適応的で、ネガティブ思考が不適応的であるという見解は、万人には当てはまらない。この背景には、ネガティブ思考が成果に繋がる防衛的悲観主義(DP)という考え方がある。DPは、過去に良い成果を残しているにもかかわらず、未来の遂行場面に低い期待を持つ認知的方略と定義される(Norem, 2001)。DPの有効性は、失敗や成功の可能性を熟考することで積極的な対処行動が生まれる点にあるが、熟考がどのような要因によって促進されるかは未解明である。そこで本研究では、DPに影響を及ぼす気質と認知的柔軟性に着目する。行動抑制システム(BIS)が高い者はリスク回避のためにDPを利用し、そのDPの熟考が認知的柔軟性によって促進されるという仮説のもと、気質が認知的柔軟性を介して熟考に与える影響を明らかにすることを目的とする。さらに、他の認知的方略との比較を通して、熟考プロセスを多角的に理解することを目指す。調査対象者は、関東圏内の大学生410名であった。調査対象者には認知的方略尺度、BIS/BAS尺度日本語版、認知の柔軟性尺度日本語版に回答させた。なお、分析にはクラスター分析と媒介分析を用いた。その結果、DP群のBISにおいては、認知的柔軟性が計画に対する熟考への影響を完全媒介した(β = .12, p < .01)。方略的楽観主義(SO)群の行動活性化システム(BAS)においては、認知的柔軟性が成功に対する熟考への影響を部分媒介(β = .05, p < .10)、計画に対する熟考への影響を完全媒介した(β = .05, p < .10)。これらの結果は、個人の気質が直接熟考に繋がるだけではなく、認知的柔軟性を活用することで、建設的な熟考プロセスへと導くことを示唆する。つまり、認知的柔軟性は個人の気質と熟考を結びつける重要な媒介変数であり、DPやSOの熟考プロセスの解明に必要不可欠な要素であろう。
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