講演情報

[03心-ポ-47]陸上短距離選手のスタート前におけるルーティンのパターンと効果について

*鈴木 龍馬1 (1. 新潟医療福祉大学)
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短距離走は高い集中力と瞬発力が求められる競技であり、競技直前の緊張や不安がパフォーマンス低下の要因となる。こうした心理的状態を安定させる手段として、多くのアスリートが独自に取り入れているのが「ルーティン動作」である。国内におけるルーティンの効果や活用実態に関する定性的研究は限られている。本研究は、陸上競技の短距離選手がスタート前に行うルーティン動作に着目し、それが選手の心理状態および競技パフォーマンスに与える影響を明らかにすることを目的とした。新潟医療福祉大学陸上競技部に所属し、短距離種目を専門とする男子16名・女子16名、計32名の学生アスリートを対象に、ルーティン動作の実施状況とその心理的・身体的効果について調査を行った。Googleフォームによる自由記述式アンケートを実施し、加えて、ルーティンの効果を強く実感している選手2名と、ルーティンを行っていない選手2名にスタートルーティン表の記入と面談調査を行い、KJ法で質的分析を行った。その結果、32名中27名(約84%)が何らかのルーティン動作を実施しており、主な動作として「ジャンプ」「腿上げ」「背伸び」「視線固定」「セルフトーク」などが挙げられた。これらは「集中力の向上」「緊張の緩和」「モチベーション維持」などの心理的効果、ならびに「覚醒」「骨盤の意識」「筋緊張の調整」といった身体的効果を伴っていた。また、ルーティンの開始要因としては、トップ選手の模倣(田中・竹内, 2017)、顧問からの助言、成功体験の再現などが挙げられた。一方、ルーティンを行っていない選手は「何をして良いか分からない」「自然に決まった動作がない」などの理由を示し、準備行動の一貫性や心理的整合性に欠ける傾向が見られた。特に、セルフトークの活用によって集中力や自己制御力が高まることは、Hatzigeorgiadisら(2011)の報告とも一致する。

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