講演情報
[03心-ポ-63]パリ2024大会におけるアスリートの精神的健康とSNS上の誹謗中傷との関連の検討
*本郷 由貴1、冨永 哲志1、大西 壮流1、立谷 泰久1、柄木田 健太1 (1. ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター)
近年、スポーツ界におけるSNS上の誹謗中傷は国際的に深刻な課題とされており、IOCはパリ五輪期間中に選手や関係者への誹謗中傷投稿が8500件を超えたと報告している(IOC, 2024)。こうした誹謗中傷やネガティブなコメントにさらされることは、アスリートのメンタルヘルスや競技パフォーマンスに影響を及ぼす可能性があるが、日本においてどの程度のアスリートが被害を受けているかは十分に明らかでない。本研究では、パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会期間中におけるアスリートのSNS利用に関連する誹謗中傷の実態と、精神的健康度および主観的実力発揮度との関連を明らかにすることを目的とした。調査は2024年10月~2025年1月、パリ2024大会に出場した日本人選手を対象に、Webアンケートを実施した。分析対象は123名(男性61名、女性62名、平均年齢28.70±8.39歳)であった。調査内容は、大会期間中のSNS利用、誹謗中傷に関する質問、Kessler心理的苦痛尺度(K10)(古川,2003)、および実力発揮度に関する項目であった。単純集計の結果、SNS上でネガティブなコメントやDMを受けた選手は全体の12%、そのうち1件以上の誹謗中傷を経験した選手は約4.1%であった。また、SNS上でネガティブなコメントやDMを受けた経験の有無と精神的健康度(K10)の関連についてMann-WhitneyのU検定を実施した結果、有意差は認められなかった(p=.066)が、効果量はr=0.168と小さくとも一定の影響が示唆された。さらに、精神的健康度は大会中・帰国後ともに約2割の選手がカットオフ値を超えていた。加えて、精神的健康度と主観的実力発揮度の間には有意な負の相関(ρ=−0.32, p<.001)が認められ、精神的に苦しいと感じる選手ほど、自分の実力を低く見積もる傾向がみられた。
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