講演情報
[03心-ポ-67]スポーツ指導者がコーチング場面で経験する心理的葛藤の質的検討大阪府リーグ社会人サッカー監督を対象として
*筒井 香1、伊藤 瑞希2 (1. 株式会社BorderLeSS、2. OsakaCitySC)
指導者、特に監督やヘッドコーチになれば意思決定をする場面も多く、勝敗の責任を負っている立場として非常にプレッシャーのかかるポジションであり、練習や試合、遠征、合宿と休日返上で現場に出て身体的に疲労するだけではなく、見えない心理的疲労も多くあると考えられる。そのためスポーツメンタルトレーニング指導士の心理サポートは、アスリートに限らず指導者に対してもニーズは高いと思われる。このニーズにより応えていくためには、指導者がコーチング場面で経験する心理的葛藤にどのようなものがあるのかを把握することが重要になると思われる。そこで本研究では社会人サッカーの監督を対象とし、新シーズンに向けたチーム作りの時期から、優勝・昇格をかけたリーグ戦中に経験する様々な心理的葛藤についてインタビュー調査を実施した。分析方法としては、一事例について詳細に検討することを目的とし、インタビューで得られた発話を質的データ分析法によって質的に分析することとした。その結果、指導者として選手の成長を支援し、全ての選手に試合出場機会を与えたい気持ちと、リーグ優勝・昇格のために試合に出場する選手、出場しない選手を選ばなければいけない現実との間で心理的葛藤を抱えていることや、社会人サッカーという働きながらサッカーをする環境で、トレーニングや試合を欠席する選手も出てくる中での選手選考の難しさに心理的葛藤を抱えていることが明らかになった。また、選手に関することに限らず、スタッフとのコミュニケーションやトレーニング環境に関する心理的葛藤も見られた。本研究の結果は、指導者を対象とした有効な心理サポートの在り方を考える際の貴重なデータになると考えられ、また競技レベルや年代など指導対象によって特有の心理的葛藤もあると想定されることから、事例研究を積み重ねる重要性も示唆された。
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