講演情報
[03心-ポ-69]競技的身体性は描画に表れるか:描画判別課題による探索的研究風景構成法を用いて
*伊藤 友記1、森 司朗2 (1. 鹿屋体育大学大学院、2. 鹿屋体育大学)
スポーツ現場における競技者の心理的支援では、初期のアセスメントや経過に伴う心理的変化の把握を目的に、質問紙法や描画法(投映法)が活用されている。描画法は、言語化しにくい感情や無意識的側面を表現できる点で有効であり、なかでも風景構成法(Landscape Montage Technique: LMT)は、心理臨床領域で診断的・治療的な側面をもって広く用いられている。競技者は身体を通して自己を表現する存在であり、日常動作や姿勢、筋肉の使い方などにも無意識的な自己が投映される。とりわけ、競技者は競技特有の身体性に対する感受性が高く、同一競技に携わる者同士であれば、その身体性が描画にも共通して表れ、相互にそれを知覚できる可能性があると考えた。本研究では、大学生の野球選手、バスケットボール選手、および部活動未所属者(各10名)を対象に、それぞれの競技者が描いた絵を用いて一対比較法により判定課題を実施した。提示は、直感的判断(5秒間提示)と、思考的判断(無制限提示)に条件分けし、各判定後にはVASで確信度を評価させた。思考的判断では判定根拠も語らせた。結果、いずれの群も正答率はチャンスレベルを超えず、競技者であっても自身と同じ競技の描画を判別することは困難であった。また、競技者と非競技者間に有意な差も認められなかった。これは、描画に競技特有の特徴が明確に投映されるとは限らず、仮に投映されていても識別可能とは限らないことを示唆する。一方で、一部の描画および参加者において偶然以上の正答傾向が見られたため、今後は競技経験、身体感受性、内受容感覚、競技レベルといった個人要因の検討を予定している。本研究は、身体性に基づいた無意識的表現としての描画が、競技者の理解や心理支援においていかに機能しうるかを探るものであり、今後は個人要因や競技種目特性との関連について、さらに多角的な検討が求められる。
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