講演情報
[03心-ポ-73]サッカーのPK戦における意思決定に関する質的研究
*大嶋 拓1、関矢 寛史2 (1. 広島大学大学院、2. 広島大学)
サッカーのPenalty Kick(以下,PK)はプレッシャーがかかる場面であり,プレッシャー下での意思決定がPKのパフォーマンスに影響すると考えられているが,PKでの意思決定に関して調べた研究は限られている.そこで本研究はPK戦においてキッカーがどのような思考過程を経て意思決定を行っているかについて質的に調査することを目的とした.公式戦のPK戦でキッカーを務めたサッカー部所属の男子大学生5名を対象にPK戦時の映像を視聴させながら半構造化面接の形式でインタビュー調査を行った.PK戦を4段階に分け,6項目の基幹質問項目を尋ねた.データ分析では,PK戦での思考過程を個別に検討するために調査対象者ごとに分析を行うSCATを用いた.調査の結果,PKを成功した4名がシュートコースに関する意思決定をPK戦開始前に行っており,事前にシュートコースを決定しておくことでPKへの集中や成功への自信が高まっていた.事前に決めたコースにシュートする戦略に関して,先行研究では正確なシュートとの関連から有効性が示されてきたが,本研究では集中力や自信の高まりとの関連性が示唆され,不安の増加による注意散漫を防ぐという点でも有効であると考えられる.一方,PKを失敗した1名は疲労による不安や自分の順番直前で自分のPKに対するプレッシャーの高まりを感じ,シュートコースの選択に迷いが生じていた.さらに,不安や迷いが助走開始直前まで継続したほか,キック動作への意識の増大もみられた.従来の「あがり」研究では注意散漫による注意資源の不足と自動化されたスキルの意識的処理のどちらが「あがり」を生じさせるかについて議論されてきたが,本研究では両者が同時に生じることでPKのパフォーマンスを低下させる可能性が示唆された.今後,注意資源の不足と意識的処理が同時に生じることで「あがり」が引き起こされることを実験的に検討する必要がある.
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