講演情報

[09コ-ポ-57]大学運動部活動における組織文化の変容に関する事例研究指導者の取り組みに着目して

*矢野 広明1、伊藤 雅充1、杉田 正明1 (1. 日本体育大学)
PDFダウンロードPDFダウンロード
本研究は、大学運動部における組織文化の「慣行」レベルの変容に指導者の取り組みがどう作用するかを明らかにすることを目的とした。ある大学運動部を事例に、ホフステードらによって開発された組織文化診断モデル「マルチフォーカスモデル」(MFM)(Hofstede, 2011)を用いたプレ・ポスト診断と、指導者への定期的ヒアリングを組み合わせた混合研究デザインを採用した。MFMは、組織文化の表層的で観察可能、かつマネジメントによって変化させやすい側面である「慣行」を、「組織の効率性」や「外部の受入」といった6つの独立した次元から多角的に測定する質問紙である。指導者はプレ診断結果に基づき、学生リーダーへのメンタリングと全部員参加による「本音の対話」という介入を行った。
その結果、MFMの6次元の1つである「D5:外部の受入」のスコアが変化した。これは無秩序な開放性から目標達成に焦点化された建設的対話への質的転換を示唆した。また、リーダーシップ受容度においては、部員が認識する現在の指導者のリーダーシップスタイルに変化が見られると共に、理想とするスタイルへの期待が一層高まる傾向が確認された。組織文化の同質性にも変化が生じ、認識の多様性が増したことが示された。
これらの結果から、指導者の意図的な介入が、チームをいわゆる「仲良しクラブ」の状態から、目標達成に向けて建設的な対話を行い、多様な意見を許容する、よりバランスの取れた組織文化へと移行させつつある可能性が示唆された。

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン