講演情報

[11教-ポ-09]高等学校体育におけるサッカーの実践報告エコロジカル・アプローチを活用した授業デザイン

*枝村 隼人1、梅澤 秋久2 (1. 横浜国立大学教育学研究科、2. 横浜国立大学)
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伝統的な体育科教育においては、目標―達成―評価型のカリキュラム(佐藤,2010)が用いられている。画一的で測定可能な技能獲得を目的とするタスク分解と反復を通じた教育方法である(梅澤,2024)。近年、学習者の主体的な意思決定を促し、状況と文脈の中で学ぶという現代の社会構成主義的学習観に依拠したエコロジカル・アプローチが注目されている。エコロジカル・アプローチとは、教師が手取り足取り運動そのものを教えるのではなく、制約のある学習環境から運動を学ばせる教育方法である。本研究では高等学校体育授業において、エコロジカル・アプローチを活用した実践を報告する。通常のサッカー競技から、人数やコートの広さ、ゴールの数を変更させたゲーム(スモールサイドゲーム)を授業内で実践した。具体的には、ピッチサイズは縦25m×横30mとし、ゴールをそれぞれ3つ用意した。中央にはパス通過で得点とするゴール、両サイドにはドリブル通過で得点とするゴールを設定した。シュートで得点を競い合うゲームではなく、サッカーの競技特性である突破場面を得点とすることで、協働的に突破する価値を高めた。アウト・オブ・プレー後の再開方法はキックインとすることで、インプレ―と同様の関わりへと繋げられるようにした。分析内容は、単元の初めから終盤へのゲームの様相、すなわち、①チーム内におけるパスの本数の変化、②個人個人のパスを受けた回数、③攻撃における戦術の多様化、④毎時間の振り返りを通した学習者のテーマに対する意識などを分析し、エコロジカル・アプローチの有効性を検証した。 ③の結果を例にあげると、攻撃面におけるポジショニングの広がりやサイド攻撃の増加、味方と相手の位置を認識した上でのパス等が認められた。④の単元後の振り返りを共起ネットワーク分析した結果、「周りをみる重要性」や「全員がゲームに参加できる実感」というカテゴリーが創出された。

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