講演情報
[11教-ポ-10]水泳領域における「心得」の指導内容の検討(第2報)現行(2017告示)及び前(2008告示)学習指導要領における英訳版を手掛かりにして
*稲垣 良介1 (1. 岐阜聖徳学園大学)
水泳運動系における「心得」は、水泳授業の有無に関わらず、すべての学校で実施する内容である。本研究の究極的な目的は、授業を設計する際の基盤となる「心得」の内容を明らかにすることである。前報では、現行学習指導要領における「心得」の特徴を明らかにした。本報告は、「心得」の英訳版に着目した。2017年告示学習指導要領の英訳版(仮訳)では、「心得」は小学校(4箇所)及び中学校(3箇所)ともにすべて「manners」で統一している。また、「manners」に対照する日本語の語句は、小学校では「心得」(4箇所)だけである。一方、中学校では「心得」(3箇所)以外に、「マナー」(5箇所)にも対照している。2008年告示学習指導要領の英訳版(仮訳)では、「心得」は小学校「rules」(4箇所)、中学校「knowledge」(3箇所)を用いて学校段階別に対照している。また、小学校英語版の「rules」に対照する日本語句は19箇所あり、「心得」(4箇所)以外に「きまり」(8箇所)、「規則」(3箇所)、「約束」(2箇所)、「ルール」(2箇所)がみられる。中学校では、「knowledge」に対照する日本語の語句は6箇所あり、「心得」(3箇所)以外に「知識」(3箇所)がみられる。また、「心得(知識)」(knowledge)は、「マナー」(manners)及び「ルール」(rules)とそれぞれ明確に区別している。このように、「心得」の英語版の訳語をみると、それらは、完全に一致した語句と対照されているわけでなく、学校段階、公示時期によって違いがみられる。「心得」は、その概念が多義であるという性質をもち、この多義性こそが最大の特徴である。このことは、「心得」の限界というよりも、可能性を示すものと考えられる。「心得」は、知識や理念を行動と架橋する語句でもあり、内容を無限に解釈する余地を生むことも特徴である。
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